フランス 2020
監督、脚本 ジュリアン・モーリー、アレクサンドル・バスティロ
モロッコでは誰でも知ってるというぐらい有名な妖女伝説を題材にしたホラー。
監督はフレンチホラーの鬼才モーリー&バスティロコンビなんで、どうしたって期待感は高まります。
いまだ屋敷女(2007)の強烈さは脳裏にこびりついてますしね。
ゴアな描写では定評のある監督ですが、本作ではその手のスプラッターな場面は控え目。
ま、それは駄目!!みたいなエグい撲殺シーンはあるんですけど、監督ならでは、ってほどでもない。
ホラーの見すぎで私の感覚が麻痺してるだけかもしれませんけどね。
タイトルにあるカンディシャとは妖女の名前のことで、フルネームはアイシャ・カンディシャ。
原典がどうなってるのかはわかりませんが、アイシャ、大女です。
多分身長2メートルはある(もっと高いかも)と思う。
2メートルある人間に、敵意を持って目の前に立たれるだけでも怖いのに、それがこの世のものともしれぬ存在とくれば恐ろしくないわけがなくて。
もし私が襲いかかられたなら秒で失禁する自信がある。
どこか肉感的でセクシーなんだけど、ひどく禍々しくてデカい蹄の女、とアイシャをキャラ設定したのは出色だったと思いますね。
ホラー映画の世界で名を馳せた怪人、怪物、シリアルキラーは数あれど、アイシャみたいな妖女はこれまで存在してなかったのではないか、という気がします。
アイシャを上手に転がしていくだけで連作できそうな気もするんですが、今のところこの作品自体があんまり話題になってない、という悲しい現実があったりしまして。
この作品のなにが良くなかったのか、ま、答えは実に簡単で、物語をアメリカンホラー風のティーンエイジャー向けっぽい内容にしてしまったから、に他なりません。
もう、本当にありがちなストーリーになっちゃっててですね。
多くの人が、なんだこれキャンディマン(1992)かよ!っていってて、私もほんとそうだよなあ、と思う。
あえてキャンディマンに限定しなくとも、色んなホラー作品ですでに何度もやってそうな類型のパターンを飽きずにまたやってるだけ、と言ってしまってもいいかもしれない。
いわゆるアホな高校生の他愛のないいたずらが、とんでもないものを呼び出してしまった、という鉄板の構図。
もうちょっとなにかあっただろう、モーリー&バスティロよ、と思うんですけど、ホラーに入れ込んでないライトな若年層にも見てほしかった、ってことなのかなあ。
まー見事に何も残らないですね、アイシャ以外は。
終盤、最後の大勝負での顛末が予想外に残酷で監督らしいな、とは思いましたが、それが大きく評価を覆すほどではなくて。
あとはエンディングをどう解釈するか、でしょうね。
果たして弟はなにをしたかったのか?
ヒントはあるんで、そこから想像を膨らませていくのは楽しいかもしれません。
佳作、でしょうかね。
嫌いじゃないですけど、アイシャの特異性だけでは無理、ってところでしょうか。