アメリカ 2021
監督、脚本 マイケル・サルノスキ
人里離れた山野で豚を使いトリュフを探すのを生業とする男の、商売道具である豚を探す様子を描いた人間ドラマ。
さて、なんで主人公は豚探してるのかというと、盗まれてしまったから、なんですね。
突然暴漢に押し入られて、なぜか豚だけを盗まれてしまうという憂き目にあう主人公。
豚のみが目的、というのはなかなか考えにくいですから、なにか理由があるはず、と考え、街へと情報収集に出かけていくことをやがて決心。
街に居る間に少しづつ主人公の過去も明らかになっていくんですが、多くの人が言ってるように、ここまでは、まるまるジョン・ウィック(2014)です。
ジョン・ウィックの犬が豚に置き換わっただけ。
で、ジョン・ウィックの犬が亡き妻の忘れ形見だったことに対し、主人公ロブの豚が彼にとってどういう存在であるのか?を、まるで明らかにしないのが物語をわかりにくくしてる一番の要因ではないか?と私は思います。
博愛主義者というわけでもなければ、ヴィーガンだから命を粗末にできないというわけでもなさそうですし。
なんか異様に固執してるんですけど、ぶっちゃけそこまでしなきゃならんか?とみんな思ったんではないですかね。
なんかわからんが、やたら頑固で変わった人なんだなあ、という印象を助長するばかりでして。
多分、豚はアイコンでしかなくて、主人公が豚を失うことにより、過去を吹っ切るプロセスを監督は描写したかったんでしょう。
けど、それをこのシナリオ進行と素材で表現するのは少し無理があるのでは?という気がしなくもなくて。
豚とトリュフ探し職人に説得力をもたせようと思うなら、なぜ主人公は前職を捨ててこの道を選んだのか?を描くことが必須だと思うんですよ。
でないと、ロブの怒りも焦燥も必死さもまるで伝わって来ない。
なので後半で実は料理人だったと明かされたところで、それが豚探しと全く繋がらないんですよね。
そもそも有名な料理人だったからといって、この物語のような展開が起こりうるなどと私には到底思えなかったりはするんですが。
正直、後半は都合のいい料理漫画のようにも感じられて。
なんかね、やたら雰囲気だけはあるんですよ、それでいて逐一意味ありげだし。
ニコラス・ケイジもここ数年の出演作の中じゃあ、出色のはまりっぷりだったと思いますしね。
でも、ひとつづつ解体していったら結局、他人の諍いに巻き込まれただけじゃん!って誰でも気づきますし、またそれが主人公の人生に何か影響を及ぼすのだとしたらどんだけお粗末な絶望なんだよ!って話にもなる。
もっともらしくて、重層的だが、実はそれっぽいだけ、というのが私の結論。
いやもう勝手にトリュフでも毒キノコでも探しててください、と思ってしまった私はなにかか欠落してるのかもしれません。
うーん、そうでないことを祈る。