ハッチング 孵化

フィンランド 2021
監督 ハンナ・ベルイホルム
脚本 イリヤ・ラウチ

少女が見つけた謎の卵の孵化がもたらす恐怖を描いたホラー。

誰かがすでにやってそうで、実はやってなかったネタかもしれんなあ、とは思いました。

対外的に幸せ家族を演出しようとする母親と、それに答えきれず苦悩する子供(主人公の少女)の間に横たわる溝を掘り下げていく作劇が、アイディアをうまく支えてまして。

子供が隠れて卵を温める(しいては育てる)絵面、それを主筋とした序盤のシナリオ進行に既視感を覚えないわけじゃないんだけど、思ったほどには気にならない。

どっちかといえばホラーというより心理劇といった方が良いかも知れません。

母親が囚われている妄執及び心の奥底に秘めた願望を、黒いイマジネーションで可視化した、という解釈もできなくはないように思いますし。

やがてもたらされた事の顛末が、母親にどういう選択を強いたのか、たやすく想像できるラストシーンもいい。

なんとも嫌な余韻を残すんですけど、これこそが母親の望んでいたことなのではないか?と私は考えたり。

もし続編があるなら、きっと母親はまた孵化を望むんだろうな、と(続編のほうが更に面白くなる気がする)。

SNS全盛な時代だからってわけじゃなく、古くからこの手の母と子をめぐる家族劇は広く題材にされてきましたから、いつになってもこんな連中は一定数居るってことなんでしょうね。

ま、身もふたもないことをいってしまうなら、ある鳥類の特殊な行動をなぞらえてストーリーの骨子としただけ、と言ってしまえなくもないんですけどね。

ちなみに私が少し気になったのは、カメラワークが単調なことと、どこかテレビ映画っぽい質感があること。

なんだかB級ホラーっぽい佇まいなんですよね、そういう内容じゃないのに。

CGを使わず、アニマトロニクスで孵化した生き物を表現したことが影響してるのかもしれませんが、ちょっとね、見せ過ぎかなと思わなくもない。

あと、孵化するシーンはエンディングにもってきたほうがインパクトは強まった、と思いますね。

新人監督の長編デビュー作として悪くはないんですけど、改善の余地は残されてる気がします。

とりあえず次に期待、でしょうか。

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