2021 フランス
監督、脚本 セリーヌ・シアマ
亡くなった祖母の家の片付けに訪れた少女が、どうしたまやかしか、幼き日の母と時空を超えて交流することになってしまうファンタジー。
そもそもプロット自体がとてもシンプルで。
主人公少女が森で遊んでたらなぜか祖母の家がもうひとつあり、そこに8歳の母がいたから一緒に遊んでみた、以上、なんですね。
母親が劇中では31歳と言われてますから、およそ20年強過去へ遡行して、重なった空間に迷い込んだことになるわけですが、まあ、ややこしいことは何ひとつ考えなくていいと思います。
現実では実現不可能な「子供の頃のお母さんと遊んでみたい」という誰かの願望を可視化しただけの話。
ドラえもんがタイムマシン使って似たようなことをやってる回があったような、なかったような。
一応、裏テーマとして、娘と母の間に存在する信頼関係の小さなほころびを埋める、ってのがあるんですけど、だからといって具体的に「つまりはこういうことだ」と答えが提示されるわけでもなく、起承転結がきっちりしてるわけでもないんで、うん、なんかほのぼのとしてたね、で終わってしまう感じではあります。
口さがないことを言うなら他愛ない。
頼むから行間を読んでくれ、お前には感受性ってものがないのか!ってお叱りを受けそうですが、極論を言うなら「お父さんの仕事場での働きぶりをこっそり見学」と本質的にはあんまり変わらない、と思うんですね、この映画のやってることって。
そりゃ子供なりに見方も変わるだろうよ、って。
わざわざ時空を歪めてまで母と娘を同時代に邂逅させたなら、もう少し脚本にひねりが欲しかった、というのが正直なところ。
劇的にエンタメにしろ、ってわけじゃないんですけど、この作品のように、必ずしも幼い母と少女の気が合うとは限らないわけで。
むしろ「なんて嫌な子なんだろう」と思える部分もあってしかるべき。
そういうのも全部ひっくるめて、それでもやっぱり大好きなお母さん、ってなってたら俄然説得力が違ったと思うんですね。
ちょっといいところばっかり抽出しすぎたかな、と。
いやまあ、かわいい映画なんですけどね。
ただこんな風にほんわかとまとめるならミツバチのささやき(1973)ぐらいの挑戦はしてほしかった、と思ったりもする。
小品ですかね。
小さな子供の居るお母さんが見たら、響くものがあるような気もしますね。