DUNE デューン 砂の惑星

2021 アメリカ
監督 ドゥニ・ヴィルヌーブ
原作 フランク・ハーバート

かつてデビッド・リンチの手によって映画化された、デューン/砂の惑星の仕切り直し再映画化版。

正直、今、デューンを再映画化してうけるのか?と結構疑問だったりはしたんですが、当たりましたね。

しかもアカデミー6部門受賞ときた。

デューンといえば、もはや古典の部類かと思うんですが、時代を経ても相変わらず皆さん、この手の貴種流離譚がお好きみたいで。

つい数年前もバーフバリ(2015)が大きく話題になったことですし、もはやこの手の物語は時代を問わずに鉄板、と言えるのかもしれません。

ぶっちゃけね、個人的にはおよそのあらすじを把握してることもあって、それほど大きく期待はしてなかったんです。

ま、ヴィルヌーブがメガホン握るならそれなりの出来には仕上げるだろうと。

で、思った通りそれなりに仕上がってまして。

この作品を「それなり」などと言っては、識者の方々がひどく叱られそうな気もしなくはないんですが、やっぱり大きく冒険はしてないと思いますし、メッセージ(2016)のような知的好奇心、想像力を試されるSFマインドの豊かさも見当たりませんでしたしね。

原作にどこまで忠実なのか?にもよるとは思うんですが、全く別世界の生態系を新たに作り上げる勢いでサイエンティフィックなわけでもありませんでしたし。

155分でそれをやれ、ってのも無理な話ではあるんですけど。

どちらにせよ、私が一番驚いたのはこの一作でストーリーが完結してなかったことですね。

全く予備知識無しで見たせいもあるんですが、まさか続編ありきの第一作目だったとは露知らず。

こんなにじっくりと細かいところまで描写して、本当に終われるのか?とハラハラしてた自分が馬鹿みたいでございました。

続くのかよ!とエンドロールを見ながら真夜中に絶叫したはた迷惑なおっさんは誰でもない、この私だ。

昔、強引に2時間枠で全部終わらせたデビッド・リンチ版が恐ろしく不評でしたからねえ。

同じ轍は踏むまい、と勝負にでたか。

しかし、これが当たるとはなあ。

いや、実に丁寧に作ってあるとは思うんですよ。

帝国と公家の権謀術策渦巻く駆け引きの描き方なんて、リンチ版と比ぶるべくもないぐらい緻密で複雑怪奇でしたし。

砂の惑星という別世界を異邦感たっぷりに映像化した手腕も見事。

おなじみサンドワームはともかくとして、砂漠で生活するということがどういうことか、異文化、生活習慣、ヒエラルキーにこだわって、世界とその実態を、スケッチとコンテクストの両輪で説き伏せてくる。

映画ってそういうもんだろ、といえばそうなんですけどね、みんなできないんですよ、これが意外と。

しいてはそのバランスの良さが想像力を飛躍させる写実性へと結実する。

ヴィルヌーブは常に作品世界を俯瞰してるなあ、とつくづく思いますね。

むやみに熱くならない。

恐ろしく冷静なまま、詰将棋のような計画性でもって「ここではないどこか」を采色してくる。

それが最も効果的に表れてたのが終盤の砂嵐を突破するシーンでしょうね。

普通なら汗と怒号と狂乱で一気にボルテージはマックスですよ。

それがですよ、あたかも宗教儀礼を想起させるような荘厳さで、今から解脱でもするのか!?ってな按配であらたなる地平へと着地ですから。

今、SFやらせてこんな絵を撮れるのはほんとごくわずかだと思いますね。

ただ、その冷静さがね、冗長に感じられる部分も少なからずあって。

155分という長丁場、時々退屈に感じられる人は必ず一定数存在すると思う。

不自然に派手な演出をしない弊害といえるのかもしれませんが、そこが好みを分けるような気がしなくもありません。

こりゃもう作家性でしょうしね。

駄目な人は多分駄目なんだろうなあ、と思えるだけに、ここまで評価されてるってのが少し不思議だったり。

どっちかというとアート寄りなようにも感じたりもして。

だからこそアカデミー受賞ってことなのかな。

なのであんまり好きじゃない、って話じゃないんですけどね、高い評価故にエンタメを期待しすぎると落胆するかもしれませんよ、と注意喚起を促したい次第。

リンチ版の趣味全開なグロテスクさとは対極にあるだけに、ちょっと物足りない、と感じる古いファンも中にはいるかも知れません。

なんだかいつのまにやらSFの巨匠みたいになってしまったヴィルヌーブですけど、本当はとっつきにくさもあるんだよ、この人は、と理解できていれば素直に楽しめるかも。

次作以降の展開に期待、ですね。

きっとこれまでの映画版では見たことのない場面も出てくることでしょうし、そこを待ち望むとしますか。

できたら次で終わらせて欲しいところですけど、3部作ぐらいいくのかなあ。

それにしてもティモシー・シャラメはみるからに王子って感じの美男子で役柄にぴったりすぎて、少し笑った。

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