新々上がってなンボ!太一よ泣くな

2004年初出 小池一夫/叶精作
小池書院劇画キングシリーズ 全12巻

ようやく念願のプロゴルファーになれた太一の活躍を描く、新上がってなンボの続編ゴルフ漫画。

前作終了年に新連載が開始されてるので、もともと続きを書く予定だったのかもしれませんせんが、別段内容に変化があるわけでもなにか新しいことをやろうとしてるわけでもないので、なぜわざわざ仕切り直した?と疑問だったりはします。

「新」と「新々」って、一字しか違わないものだからややこしいんですよね。

前作が36巻にも及ぶ長期連載だったから、微妙に実売部数が落ち込んでたのかもしれません。

漫画は殆どの場合、1巻が一番売れますしね。

物語は前作と全く同じ調子で、プロになっても変わらず謙虚で真摯な太一の精進の毎日と、深い夫婦愛を描いていくことを主軸に進行。

従来のファンは文句なく楽しめるんじゃないかと。

唯一物議を醸すとしたら、最終話に至るまでの終盤のストーリー進行でしょうか。

プロとしてはあまりに非力すぎる自分を、様々な技を習得することでカバーしてきた太一が、突然パワーゴルファーへの転身を画策しだすんですよ。

いやいや、それがどうしても不可能だったからこそ成立した物語じゃん、大前提を根本から覆してどうする、とあたしゃ焦りましたね。

しかも体格に恵まれない太一がロングショットを実現させるためのロジック、特訓法がどうも怪しくてね。

私はゴルフに詳しくないんで断言はできませんが、なんだこれ、どこの怪しいセミナーだよ、と思った。

もしそれが本当に実現するものなら、ゴルフのみならずスポーツ界自体に大変革が起こるわ!と。

あれほどスポーツ科学に造詣が深く、プレイヤーのメンタル、ゲーム理論にまで鋭い考察を披露した小池一夫がいったいどうしたことか、と。

実際のゴルフ界自体がロングショット時代に突入したため変化を余儀なくされた、と指摘されてる方も居ますが、それにしたって強引にひっくり返しすぎ。

あげくには、あれほど固い絆で結ばれていたはずの嫁の八重が、そんな太一に辛抱できずに離れていこうとするんですよ。

いやいや過去にもっと大変なことがたくさんあったじゃないか、なんでその程度のことで?と頭の中を飛び交う疑問符。

内情はわかりませんが、慌てて物語を閉じようとでもしてたのかなあ、と。

とにかく上がってなンボらしくないし、なにより説得力がない。

ま、多いですけどね、小池一夫の長期連載で最後がおざなりになるパターン。

太一よなくなシリーズは前作で終わっておくべきだったのかもしれません。

最後までもう少し集中して原作やってくれてたらなあ、と思うんですけど、後年は借金問題とか色々あったんでそれどころじゃなかったのかも。

肝心のエンディングに違和感を覚えるファンは多いんじゃないでしょうか。

あいかわらず叶精作の作画は素晴らしいんですけどね。

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