2008年初出 多田乃伸明
メディアファクトリーMFコミックス 全4巻

ハル・クレメントの代表作、20億の針(1950)を下敷きとした侵略SF。
しかしまあ大胆だなあ、とは思いますね。
どうせ指摘されるんだから、といった開き直りがあったのかどうかわかりませんけど、タイトルそのままだもんなあ。
なんで20億が70億になってるんだろ?といった点のみ、不可解だったんですけど、調べてみたら1950年代当時と2008年では世界の総人口が違うから、だとか。
なるほど・・・って、ますますそのままで挑戦的じゃねえかよ。
ま、その野心?みたいなものに激しく呼応するSFファンもいるだろうな、とは思いますけどね。
私のことだけどね。
もうね、色んな作品が「寄生する宇宙人」のネタを流用してるわけですよ。
寄生獣(1990~)は言うに及ばず(寄生獣のミギーは宇宙生命体じゃないけど)、鉄腕バーディー(2003~)もそうだし、ヒドゥン(1987)を筆頭に映画の世界でも掃いて捨てるほどこの手の設定は蔓延してるわけで。
斬新なことができるとは到底思えないんですが、新しい描き手がね、SFに真正面から挑戦すること自体を温かく見守ってやりたい、と言う気持ちもあって。
新人漫画家の多くが生ぬるいファンタジーでお茶を濁す時代ですしね。
多分、彼らの多くは20億の針を読んだこともなければ、知りもしないだろうと思うんですよ。
多少のことは目をつぶろうじゃないか、と。
SF漫画という死に体のジャンルを、支えるべきSFマニアが潰してしまうのだけは避けなければならないですしね。
そしたらですよ。
いや、悪くはない。
悪くはないんだけどね、あまりに内容が青春してて。
SFとは別な部分でおっさんには辛かったりするわけだ。
あとはねえ、真っ直ぐに善悪やモラル(信じる心?)を高々と旗印にしすぎかな、と。
宇宙人相手の話なんだしね、これを薄甘い、と切って捨てる人も出てくると思うんです。
まだ若い漫画家っぽいんで、青臭くなるのは仕方ないのかもしれないけど、思ってたより優しすぎる内容だった、というのが正直なところ。
ただ、ぎこちなさも含めて精緻な絵を描く人だと思うんで。
なにかやってくれそうな気はしてるんで、次作に期待、ですかね。
SFを描き続けてほしい、とは思いましたね。