サマーウォーズ

2009 日本
監督、原作 細田守

恥ずかしながら細田守の劇場用アニメは一本も見たことがなくて。

話題になってるのは知ってたんですけど、なんとなくタイミングを逸したまま時間ばかりが過ぎてしまったような状態でして。

ちょっとしたきっかけがあって、やっぱり見ておかねばな、と今回重い腰をあげたわけですが、いや、こりゃ確かに面白い。

そりゃヒットするわ、と納得。

一言で言ってしまうなら、こりゃ昭和と平成のハイブリッドでしょうね。

メタバースの概念がおぼろげな頃にメタバースをテーマとしてインフラの麻痺、しいては国家の危機を描くというアイディアも良かったんですが、それに抗するのが古くから大事にされてきた田舎の大家族という共同体だった、という物語の対立構造がよくできてる。

普通、このテーマならマトリックス(1999)みたいな方向性でまとめるほうが簡単だと思うんですよ。

そこにあえて90歳の老婆を頂点とした近親縁者一族を放り込んでくる、ってのが考えられてるなあ、と。

SFっぽいプロットの間口の広げ方としては理想的でしょうね。

緊張と弛緩の落差が楽しいんですよね。

小惑星探査機が地上に落ちてくるってのに、身内で揉めてる場合か!と思わずつっこんでしまいたくなる隙があるのがいい。

ま、90歳のばあちゃんがあまりに出来過ぎな人物であることが玉に瑕ですが、古き良き日本の家族風景にこれぐらいの幻想は抱いてもいい、と私は思うんです。

急速に核家族化が進んだ現代日本に暮らす若い人たちにはぴんとこないかもしれませんけど。

でも、こういう形でお互いを気遣う濃ゆい関係性があって、その後日本は今のような形になった、と知ることも大事だと思うんですよね。

血縁のチームワークが組織を出し抜いて大活躍する、ってのがありそうでありえなくて微笑ましいんですが、そんな風にやれたらいいよね、と少しでも思えたら、多分それが見てよかった、ってことだと思うんです。

ドタバタぶりや、そのノリ、価値観が実に昭和的(80年代的?)で、仮想空間とのギャップを狙った抱合せだとしてもちょっとしんどい、という人もいるかも知れませんが、こういうのを温故知新というのでは?と私は思います。

とりあえず、婆ちゃんの手紙には泣かされた。

その時点でもう負けです、私の場合。

スリルと可笑しさをドラマチックに演出した良質のエンタメだと思いますね。

ただまあ、唯一ラストシーンに関しては、さすがにね、昔の漫画(アニメ)を見てるようでちょっと引きましたが。

確信犯?

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