首斬り朝

1972年初出 小池一夫/小島剛夕
小池書院 全8巻

ああ、これはこれはもうひとつの子連れ狼だ、と思いましたね。

もちろん大吾郎はでてこないし、柳生も敵対しませんが、公儀介錯人として拝一刀がもし職務に殉ずる覚悟をして日々を過ごしていたら、こうなったのではないか、と夢想させる内容。

幕閣ぐるみの派手な陰謀も剣劇もありませんが、人の首を落とすのを仕事にするというのは一体どういうことなのか、というのがもの悲しくも粛々と描かれています。

市井に存在する首斬り職人のプロフェッショナリズムと悲哀が静かに胸を打つ。

人の命をうばい続けることの懊悩、贖おうにも贖いきれぬ罪業が、子連れ狼からこぼれ落ちたものとして、本作には息づいている、といえるんじゃないでしょうか。

小島剛夕の精緻で写実的な描画もここにきてますます冴え渡る感じ。

刑場での山田朝右衛門の覚悟に満ちた表情は凡百のつまらぬ説明的なセリフを蹴り飛ばして恐ろしく雄弁です。

ここまで毎回毎回死と向き合った時代劇漫画って、他にはないと思いますね。

とにかく首がとびまくるのでその残忍さ、生々しさに辟易する人もいるかも知れませんが、こりゃ傑作だと思う次第。

どこか品格のようなものすら作品から感じるのはどういうわけか。

このコンビならではの名品でしょうね。

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