ミヨリの森

2003年初出 小田ひで次
秋田書店ボニータコミックス

この作品がボニータに連載されてた、ってのも驚きなんですが、少女誌掲載が何らかの影響を及ぼしたのか、随分上手になった、と感じられたのも喜ばしい驚きの一つ。

デビュー作である拡散(1993~)なんて、ともすればカルト、インディーズと紙一重な部分もありましたし。

描きこみの細かい精緻な絵柄は相変わらずなんですけど、抜くべきところは抜く、なにもかも全力ですべてを注ぎ込むのが決して最良なわけじゃない、と理解した風ですね。

それがいい意味で緊張と緩和を作品にもたらしてる。

ただ、作品が大きなテーマとしてる自然と人間の調和、しいては森の精霊の存在等、使い回されてるプロットだったりはするんで。

そこにどうしたって新鮮味は感じられない。

やっぱり多くの人はジブリの諸作品を思い出したりすると思うんですよね。

そりゃどう頑張ったところでこの手の題材を扱わせたら宮崎駿のほうが1枚も2枚も上手。

じゃああえてマンガ表現で、ジブリにないものをどう掘り下げていくのかを考えたとき、ダム問題や母娘の相容れぬ関係性だけでは訴えかけるものがあまりに弱い、と思う次第。

よく出来てる、とは思うんです。

拡散のわかりにくさに比べたら、俄然読者の購買意欲をそそる内容になってる、とは思う。

でもそこに、拡散で見せつけた開拓精神、尖りっぷりは存在しない。

難しいところだと思うんですけどね。

アニメにもなった話題作ですし、ボニータの読者層を考えに入れるなら、これはこれでいいのかもしれませんが、小田ひで次という特異な漫画家の作品にしては毒が抜けてしまったような印象。

別個の路線であり、別のファン層を掘り起こした新機軸、と解釈するのが正解かもしれませんね。

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