プリズナーズ・オブ・ゴーストランド

アメリカ 2021
監督 園子温
脚本 アーロン・ヘンドリー、レザ・シクソ・サファイ

園子温のハリウッドデビュー作であり、なんでもありのアクションファンタジー。

おそらくベースにあるのは西部劇だろうと思うんですけど、それをでたらめな世界観で装飾、趣味的に東洋化したのが本作かと思います。

序盤、岡場所っぽいセットだなあ、ここにニコラス・ケイジ放り込んで最後まで突っ走るつもりなのかなあ、と思いきや、別の場面ではシックス・ストリング・サムライ(マイナーな古い映画を持ち出してきてすまんが、似てるのよ)のような砂漠の荒廃した風景をバックにスチームパンク風だったりと、なにかと雑然。

こういうごった煮というか、おもちゃ箱をひっくり返したようなやりたい放題は割と好きなんですけど、いかんせんよろしくなかったのが脚本で。

なんかね、主人公を救世主的に奉りあげたかったんでしょうけど、たかが銀行強盗風情になんでそこまでの期待値を積む?って話で。

最終的には革命の旗印みたいになっちゃってるんですよ。

いやいや60~70年代のジョン・ウェインやクリント・イーストウッドだってそこまでの重荷は背負えんわ!って。

ドラマチックにしたかったのかもしれませんが、悪党は最後まで悪党風情で良かったと思いますね。

悪党なりにできることをやる、みたいな。

感応式の爆弾で全身を覆われたからやむなく仕事をひきうける、という設定にしたのも良くなかったかもしれません。

爆弾解除されたら自由の身なわけですから、その時点で主人公が街にかかわる理由が喪失してしまいますしね。

自由となってすら、人のために戦うべき理由を作中で提示できてないんです。

あと、金玉爆破のエピソードはマジでなんのために挿入した?と思いますね。

どこかコミカルな作品ならいいですよ、結構シリアスなのに、主人公金玉消し飛んでるんだもん。

街の連中も片金野郎に助けてもらいたくなかったろうになあ・・・と私は一人遠い目をしてしまったよ。

普通にね、大金を積まれて仕事を引き受けたが、情に絡みとられてやむなく人助けしてしまった、ってなストーリー進行で良かったと思うんですが、なんで余計なことばっかりしたがるかな、と思いますね。

園子温、本気で演出してる?とちょっと疑ったりもした。

ま、ハリウッド映画ですんでなかなか監督の思いどおりにすべてはコントロールできないでしょうけどね。

器は悪くなかったんだけど、中身がスカスカでまるで味がしなかった、ってのが実情かと。

しかし園子温はちょっと壊れた風な美少女が本当に好きだなあ、と思いますね。

よく言えば退廃美なんでしょうけど、いささかついていけないものを感じたりも。

ま、外国人にとっては岡場所の風景をディフォルメした世界観が新鮮にうつるかもしれませんが、それを加味したとしても秀作とは言い難いですね。

完全に外国人だけのスタッフ、役者でやるべきだったかも、と少し思ったり。

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