アメリカ 1998
監督 ランス・マンギア
脚本 ランス・マンギア、ジェフリー・ファルコン

核戦争勃発後、ソビエトに支配されたアメリカに唯一残された楽園、ロスト・ベガスの王となるため旅を続けるロックンローラー、バディの戦いの日々を描いた近未来仮想バカSF。
ソビエトがまだ崩壊してなくて冷戦真っ最中だったのが如実に伝わってくる舞台設定に、まずは一発かまされます。
若い人が今あらためて見ても、は?ソビエト?なぜ?とさっぱり理解できんでしょうね。
まあ、それ以前の問題としてなんでロッカーが弱肉強食な世界における歴戦の勇者みたいな扱いになってんだ、と言う部分からしてバカ全開なわけですが。
一定の年齢以上の人はギターを抱えた姿を見て、人造人間キカイダーあたりを思い出したりするんじゃないでしょうか。
実際、主人公バディはキカイダーばりにギターで敵をぶんなぐったりギターにのって砂丘をすべっていったりする。
ああっ、チューニングがあ、ネックが変形するうう、と悲鳴をあげた方は私と同じく音楽経験者。
もちろん戦いの前に、突然ギターを弾きだしたりもするわけです。
これがまたアンプ通してないのに音が歪んでいたりする。
監督がやりたかったのは北斗の拳的な終末的世界観を拝借したミュージックシーンの推移の隠喩的可視化でしょうね。
そこは擬人化と言っていいかもしれない。
ロスト・ベガスの前王がエルビスで敵がヘヴィメタル、ってのがいかにも象徴的。
さしずめバディは古きよきロックの具象化された存在でしょうか。
もう苦笑いするしかない内容だったりはするんですが、それでもこれをある種の寓話と考えるならエンディングはなかなか秀逸だったと思います。
結局バディはお供の少年に何を伝えていったのか。
ラストシーン、少年の後姿が実に印象的です。
決して隠れた大傑作!と言うわけではないと思いますが、90年代に一生懸命ロック聴いてた私のような人間からするといちいちツボにはまる映画だったりはしますね。
バディを演じたジェフリー・ファルコンの動きがやたらキレキレなのも見どころのひとつ。
格闘技かなんかやってたんでしょうかね、この人。
配役の風貌はまるでエルビス・コステロですけど。
私はこの作品の開き直ったバカっぷりが好きですね。