2021 カナダ
監督、脚本 カーク・クーエット
キングスマン(2014)っぽい感じなのかな?とDVDのジャケ写を見ながらイメージ膨らませてたんですけど、実際は全然違った。
孤独な殺し屋である主人公と、偶然標的となった女の交流を描いた作品なんですけど、スーツ姿から想起されるスタイリシュな心象からはほど遠く、どちらかといえば泥臭い感じ。
つーかあんた、スーツなんて仕事のときに一瞬着ただけじゃん!と私はあとからつっこんだりも。
もう、売らんがために必死か、発売元アメイジングDC。
勘違いした人はきっと大量にいたでしょうね。
おそらくそういう人たちがこの作品に低い評価をつけてるんだろうなあ、と思うんですけど、先入観を抜きにすればそんなに悪くはない、と私は思ったり。
ま、早い話がハードボイルドですね。
禁欲的で他者を拒絶してきた主人公が、たった一人の女に何故か心を動かされてしまった哀しさ、わずかばかりの人間味を、きっと監督は描きたかったんでしょう。
主人公も女も決して若くはないだけにね、ああ、哀愁帯びてるなあ、と私は少し感情移入しちゃったり。
台詞回しも悪くない。
「俺の得意技は、他人に決めてもらうこと。
俺が思うに、自分で決めなければ間違いを犯さない。
間違いを犯さなければ、勝てる」
とか、
「贖罪はまやかしだ。赦しを求めても、過去は消えない。
でも復讐はリアル。復讐と贖罪は時として、驚くほど似ている」
とかね、なんだかハンフリー・ボガートでも登場してきそうな勢いで、往年の名作の匂いが香ってきたり(すまん、ちょっと褒めすぎた)。
この手の映画が好きな人ならなんとなくわかってもらえるのでは、と思うんですよ、見ていただけさえすれば。
意味はよくわからんが(だめじゃん!)どこか哲学めいたものがあるんですよね。
ただね、いささか進行があまりにも淡々としすぎてて。
妙な間があるのも判断に悩むところ。
意識的に抑制してるのかもしれないですけど、こりゃ若い人は眠くなっちゃうかもしれんなあ、と思わなくもなくて。
女が最終的に銃を手に取り、呉越同舟となる展開もよくわからない。
なんで育成ものみたいになっちゃってるの?と小首をかしげること数度。
作品のまとう仄暗い空気感は好きなんですけど、シナリオが核心を突かぬまま右往左往してる節もあって。
そのあたり、カナダ映画らしいな、といえばらしいんですけどね。
やはり、特筆すべきはやはりアクションでしょうか。
ジョン・ウィックやX-MENでスタントを努めたカーク・クーエットが主演、監督を努めてるだけあって格闘シーンや銃撃戦は目を見張る迫力。
なんかもう、突然エンジンかかったみたいなリアルな描写が一流どころにも劣らぬ出来栄えで。
多分これ、主観撮影を効果的に使ってるんだと思うんですけど、カメラ揺れまくりでここまで臨場感たっぷりに痛みの伝わる動作設計ができればたいしたもの。
自分で全部やりたかったのはこういう訳か、と。
総合的に考えるなら決してバランスが良い映画とは言い難いんですけど、私はアクションとの落差も込みで、どこか印象に残りましたね。
少なくともやりたかったことはすごく伝わってきた。
あと何作か経験を積めば化けるかもしれません。
物悲しくもキレキレのアクション映画って、あんまりないように思うんで、この路線を突き詰めることができれば頭一つ抜けるかもしれませんね。