GU-GU ガンモ

1982年初出 細野不二彦
小学館サンデーコミックス 全12巻

藤子F不二雄先生お得意の定番パターン「普通の家庭に異物を持ち込んでドタバタ」を作者流に焼き直したのがこのシリーズでしょうね。

正直、なんでいまさら細野不二彦がこんなのをやる必要が?と当時は思ったんですけど、その思いはいまだ自分の中で消化しきれてなかったりします。

江川達也がジャンプで連載してたまじかるタルるートくん(1988~)とやってることはほぼ同じですからね。

江川達也はドラえもんのアンチテーゼとしてタルるートくんをやった、みたいなことを語ってますが、本作に関してはそんな素振りも見受けられないですし。

ガキ大将と金持ちのキザな息子と何もできない主人公とヒロイン、と言うお決まりの登場人物の相関関係がいささか変化して、女性キャラが複数存在し、女子同士の駆け引きなんかも描かれていた点が現代的といえば現代的ですが、基本、オバQと同じですからね。

生活ギャグの範疇を逸脱するものでもなければ、80年代ニューウェーブと目される作者の手腕が光るわけでもない。

なんだか楽してないか、みたいな。

ふと脳裏をよぎったのは、ひょっとして細野不二彦というのは「ヒット作を換骨奪胎すること」に長じてる漫画家なのでは、という疑念。

どっきりドクターは微妙にDrスランプとかぶってましたし、さすがの猿飛は伊賀野カバ丸と題材が似通ってた。

で、今回はオバQですしね。

いや、面白けりゃいいんですよ、多少の類似性はもう仕方がないと思いますしね、パクリという人はいうんでしょうけど、私は完全なオリジナルなんて不可能だと思ってる人ですし、いわば着想のヒントが目立つか目立たないかだけの違いだと考えてるんでね、そこにいちいち目くじら立てるつもりはないんです。

けど、82年にオバQはないだろう、と。

なぜここであえて低年齢層にターゲットを絞る必要があるのか、さっぱり見えてこない。

やるならさすがの猿飛の続きを意識させるものだろう、と。

まあ、のれなかったですね。

惰性で単行本は買ってましたが、笑ったのはカシオがイエローコーティングする回ぐらい。

人気があったみたいなんで、編集部の目論見はあたったということなんでしょうけど、こんなのが続くようなら読まなくなる日も遠くはないなあ、と私は密かに思ってた。

ただ、さすがは細野不二彦と唸らされるものが全く無いわけではなくて。

仰天させられたのは最終回。

最後の最後にこんなシーンを用意して待ち構えてやがったか!と震撼させられましたね。

たった1ページのひとコマなんですけどね、あたしゃ涙腺からなにか吹き出たかと思った。

こういうことをさらっとやるから細野不二彦は侮れない。

はっきりと終わっていないオバQ(終わってると言う人もいるでしょうけど)に、合理的な完結の道筋をつけたと言う意味でも評価されていいかもしれません。

決して夢中で読んだ作品というわけではないんですが、捨て置くには迷いが残る一作ですね。

私にとってはなにかと悩ましいシリーズ。

作者の個性みたいなものは一番薄味かもしれません。

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