東京探偵団

1985年初出 細野不二彦
小学館少年ビッグコミックス 全6巻

バブル期の東京を舞台に、財閥の資金をバックボーンとして難事件を解決する少年探偵団を描いた冒険活劇。

あえて指摘するまでもなく元ネタは江戸川乱歩であり、少年探偵団なんでしょうけど、特徴的なのは明智小五郎が本作には存在しないこと、でしょうかね。

少年探偵団で言うところの小林少年=ジャッキーが主人公として、怪人二十面相=黒男爵に挑んでいくんですよ。

なんでそんなことになってるのかよくわからないんですが、掲載誌(少年ビッグコミック)の性格上の問題かもしれません。

少年を主人公にしたほうが共感を集めやすいだろう、的な。

正直、微妙な試みでは・・・と思わなくはないです。

いくら頭の回転が速い天才少年といえど、海千山千の盗賊相手に五分の勝負ができるはずはないですからね、常識的に考えて。

どうあがいたって経験値の差は埋めがたいわけですから。

なんせルール不在ですしね、こりゃ資金力でどうにかなるものじゃないでしょうし。

物語の出発点がそもそもいびつなんですよね。

なのでお話そのものが架空の都市における架空の犯罪奇譚みたいな感じになっちゃってる。

のれる人だけついてきて、みたいな。

古臭い探偵ものに堕さない工夫があちこちに施されてることはよくわかるんですが、このプロットならあんまり真面目にやっちゃあいけなかった、と私は思います。

ギャグ半分、ぐらいでちょうどいい。

なのに、なんだかいつも以上にドラマ部分、サスペンスなスリルの演出に高い比重がかかってるんですよね。

享楽的に浮かれたソドムな東京を象徴しようとしたのかもしれませんが、主人公ジャッキーがゲイで黒男爵がバイセクシャル、探偵団のメンバーはマゾに守銭奴と設定したのもいささか疑問。

なにも品行方正である必要はないですけど、都会生活者の歪みや屈折をセクシャルマイノリティに絡めるのは発想として安直すぎる。

わざわざ少年を主人公にしておきながらひどく共感しにくい、という奇妙なねじれ現象が生じちゃってるんですよね。

誰が黒男爵のショタ趣味をドキドキしながら読みたいのか、という話ですよ。

熱狂的に支持する人が一部に存在しそうではありますけど。

今ならコンプライアンス云々にひっかかりそうな気がしなくもないですね。

ぶっちゃけ、なんだか迷走してるなあ、と。

これまでとは違うことをやろうとしてことごとくスベった、みたいな。

ただ、そんな混沌の渦中にありながら、目の覚めるような秀作が一話だけ5巻に収録されてたりするんで、ほんと細野不二彦は始末が悪い。

MOBIUS EXPRESS前後篇の出来栄えだけは見事と言う他ないですね。

通勤客をも巻き込んで展開する計画犯罪の狂騒、やるせなさの作劇には舌を巻いた。

こんなの子供にゃわからんぞ、と思ってたらヤングサンデーに移ってからの掲載作品だった。

なるほどね。

青年誌に移る前の過渡期の作品、といった印象ですね。

初期を知らない人はそれなりには楽しめるのかなあ、と思ったりはします。

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