ルクス・エテルナ 永遠の光

フランス 2019
監督、脚本 ギャスパー・ノエ

魔女狩りを題材とした映画の舞台裏を出演者の会話劇で彩った異色作。

主に話してるのは作品の監督を務めるベアトリス・ダルと主演のシャルロット・ゲンズブールなんですけど、なんだかセミドキュメンタリー(モキュメンタリー?)風にやたら生々しくて、私は当初、こりゃメタ・フィクションなのか?と思ったりもした。

なんせ両者ともトラウマ映画というか、カルトな異色作に複数出演してますから。

しかも二人共、芸名そのままで登場してますし。

「これはひょっとしてあの映画のことを言ってるのでは・・・」と勘ぐりたくもなる、というもの。

何らヒントになるような具体的なエピソードは一切語ってないんですけどね。

セミドキュメンタリー風、とは書きましたが、映像自体は妙に凝ってます。

今回はやたら分割画面が随所に登場してくる。

カメラワークも淀みなく流麗。

そこはまあ、ギャスパー・ノエですんで不細工なことはやってない。

なんだろ、ブライアン・デ・パルマが実は好きだった、ってわけでもないでしょうしね。

はっきり言って同時に追えないです。

関連性のない断片的な語りかけが多くて、ストーリー自体がどこに向かってるのかさっぱりわからないせいもある。

時間が進むにつれて、物語はどんどん混沌の度合いを増していきます。

プロデューサーはどうやらベアトリス・ダルをクビにしたいみたいだ、ってのはわかるんですが、部外者や業界人が右往左往してて好き勝手しゃべりまくるんで、なにがどうなってるのか上手に見通せない。

不手際だらけでさっぱり撮影が進んでないことが問題なのははっきりしてるんですが、だからどう転ぶんだ?ってのがいつまでたっても明確にならない。

そして迎えたエンディング、なんかもうこれね、すべてを拒絶してるのか、それともはじけてしまったのかどっちだ?って感じですね。

とりあえず目をやられます。

こんなの劇場で見た日にゃあ、体調悪くして食ったばかりのポップコーンをその場で逆流させてしまいかねない。

詳しくは書きませんが、エログロや猟奇で生理的に気持ち悪い、ってんじゃなくてね、物理的にギリギリアウトなレベルの視覚効果ではなかろうか、と思うわけです。

しかもこれが長い。

私は自宅で見てたんですけど、10分ぐらいあったんじゃないかと思う。

途中で目をそらしましたしね、マジで。

これ、ずっと見てたら間違いなく気分悪くなる、と思って。

ちなみに物語そのものはどこにも着地してないです。

起承転結でいうなら、起、承、と進んで、転で本気でこけて「ひゃっはー」と向こう側の世界へ行ってしまったみたいな。

なんとなくシナリオ構成的には前作CLIMAX(2018)に近いような気もするんですが、近いからといってだからどうなんだ?と思わなくもなくて。

そりゃカンヌで賛否両論渦巻くわ。

もう、面白いとかアートだとかそういう枠組みには居なくてですね、ただただオレ流を貫いてるだけな気もしますね。

変に技術があるのがタチ悪い。

この先、ノエの映画に出資してやろう、と思う人が変わらず現れるのかどうかわかりませんけど、ここまできたら信じる道を永遠に突き進んでください、と思いますね。

いつかは歴史に名を残す怪物のような映画を作り上げる日が来るかもしれない。

私がその日まで彼についていけてるのかどうか、わかりませんが。

しかし、これでたったの51分、というのが信じられないですね。

2時間超えの映画を見た後のような疲労感に襲われました。

濃さだけで言うなら天下一品のこってりラーメンを上回るかもしれんな。

そういう比喩はいいってか、すまん。

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