フランス/ベルギー 2018
監督、脚本 ギャスパー・ノエ

有名な振り付け師の舞台に出られるチャンスを得たダンサーたちが、最終リハーサルを行う山奥の建物でひどい目にあうお話。
オープニングがまるで本格ミステリのような滑り出しなんで。
これはひょっとして謎が謎を呼ぶ展開が待ち受けてるのかしら?と身構えるんですが、ま、ギャスパー・ノエがそんな映画を撮るはずもなくてですね。
ネタバレしようにも、一体何がネタバレに該当するんだ?と悩んでしまうぐらい物語は一本道です。
最終リハーサル、終わりました、と。
じゃあみんなで乾杯しようか、と。
サングリア作ったのよ、みんな飲んで。
あれ?このサングリア、なんだか変だぞ?
誰かがサングリアにドラッグを入れたようだ、全員ラリってしまったぞ!どうするんだ!以上。
いやーもう、なんのとっかかりもないというか、だからどうした、というか。
実話ベースらしいんですけどね、はっきり言って物語の体をなしてないです。
ただただ状況を刻々と描写していくだけ。
映画の大半は、ドラッグに理性をふっとばされ出鱈目な行動に終始する、ダンサーたちの狂態に費やされてます。
意味なくエログロだったり、残酷だったり、臭気漂ってたり。
もうね、ひどく疲れます。
なにを見せられてるんだ俺(私)は?と気分が沈んでくること請け合い。
シナリオに道理も因果も不在なものだから、人が人でなくなっていく気味悪さをひたすら抽出しただけになってまして。
この映画を見て「ついていけない・・・」と思ったあなた、まったくもって正しいと私は思う。
正直、評価のしようがないですね。
ついにノエもあさっての方向へ行っちゃったか、と。
ただね、序盤のダンスシーンを撮るだけのために、一人を除いて全員本物のダンサーを集めたこだわりは強烈な爆発力を作品にもたらしてまして。
10分ほどのシークエンスなんですが、何事か、とあたしゃ思った。
ダンスとか全く詳しくないですけど、想像以上に激しくて素直にびっくりした。
そのテンションが最後まで続いてくれりゃあ、シナリオ不在でもまだ見れたか、と思うんですが、うーん、どうだろ。
役者ではない素人を集めたことが、ダンスシーン以外になにも貢献してないように思えるのが、不可解さに拍車をかけているのかもしれません。
稀代の変人監督は、もう物語性とかどうでもいい境地に至ったんでしょうかね。
熱心なファンはまだついてきてるのか?
分水嶺たる一作かもしれません。