アメリカ 2019
監督 ルッソ兄弟
脚本 クリストファー・マルクス、スティーブン・マクフィーリー
前作インフィニティ・ウォー(2018)からおよそ1年を経て封切られた続編。
正直、1年は長かったよ、マーベルスタジオの皆様方。
ディズニーの方針なのかもしれないけどさ、あたしゃぶっちゃけ細部をもう忘れちゃったよ。
前作を見て、こりゃ大変なことになった・・・!と盛り上がった気持ちもかなり冷めた。
だから言ったんだよ、一気に前後篇で公開しろ、と。
マーベルやDC系列の映画に血眼の熱心なファンならいざしらず、1年ありゃあその間に気移りする傑作もいくつか目にしちゃうわけですから。
ただひたすらアベンジャーズの続きを一途に待ち焦がれる乙女な映画ライフを送ってるわけでもないので、見始めた段階で微妙に温度差があったのは確かですね、私の場合。
見ながら少しづつ思い出してるような状態。
なのでいきなり量子物理学によるタイムトラベル、とか言われちゃうと「あー、そっちへ行っちゃうのか・・・」みたいな失望感は些少なりともあった。
この手の「自己犠牲のヒロイズム」をストーリーの核に据えた映画でね、「時間」を操ったりしちゃあ駄目なんです。
もちろんそれなりのルールは設けられてますよ、けどそれすらも「ルールを設定した時点以前に戻ればいいじゃん」ってことを作中でやってるんでね、ある意味「なんでもあり」になっちゃってるんですよね。
極論を言うなら、アベンジャーズは別段なにもしなくていい状況に世界を変質させてしまってるんです、作り手自らが。
賢明な諸氏ならおわかりいただけるかと思うんですが、もう、6つの石とか関係ないですし、時間を操れるなら。
つまり、時を超えられる時点で、サノスなんて雑魚キャラ以下になっちゃうんですよね。
本作エンドゲームがやるべきだったのは、未曾有の災厄を苦渋の思いで受け入れた上で、それでもなお諦めることなく再び立ち上がり、宿敵サノスに挑むアベンジャーズの姿を描くことではなかったか?と私は思うんですが、悲劇を悲劇として処理せず、すべてを元に戻そうとした時点で多分何かが狂っていったんでしょうね。
矛盾をはらんでしまったなあ、と。
ただね、矛盾すら併せ飲んで強引に盛り上げていくのがディズニーの資金力というか、ルッソ兄弟の力業というか。
理屈に合わないことをしている、と思いつつも、終盤1時間はひたすらテンションあがる出来になってるのが恐ろしい。
そりゃ興奮すると思います、これだけの絵面を用意されたら。
中途半端な批判なんざ軽くはねのける圧巻の大活劇。
特にエンディングで、キャプテン・アメリカの等身大なドラマを持ってくるセンスにはしてやられた。
こういうことをやられると、さすがに私みたいな偏屈でも胸打たれる。
正直、世界の歴代興行収入1位を獲得するほどの映画ではないと思います。
前後編に分けずに、一気に1本で見せきった方が良かったのでは、と思ったりもしますし。
けれど「細かいことはもういいから見ろよ!」と振り向かせる力、磁力がね、類を見ないレベルでトップクラスなんですよね。
生半可な文句なんざ引っ込むステージにある、という意味ではシリーズ最高峰かも知れません。
ところでキャプテン・マーベルはなぜ髪を切ったんだ?