スウェーデン/ノルウェー/ベルギー 2020
監督、脚本 ヨアキム・ヘデーン
深海30メートルの海底で、岩に挟まれ身動きとれなくなった妹をなんとか助けようとする姉のしゃにむな努力を描いたパニックスリラー。
ありがちなシチュエーションものかな?と思いきや、これがなかなか良く出来てまして。
まず私が感心したのは、たった82分の映画なのにも関わらず、姉妹の性格や、その生い立ち、家族の背景を少ないやりとりから観客に読み取らせるよう、序盤ですべてお膳立てしてあったこと。
姉は妹や母のことをどう思っているのか?また、どういう精神状態にあって、今回ダイビングすることをどう考えているのか?海中で事故にあうまでに、全部わかっちゃうんですよね。
これ、中盤以降の展開に強烈に作用します。
姉は最後まであきらめずに本気で妹を助けようとするんだろうか・・・まさか見捨てたりとかはないよな?・・・といった、想像をたくましくする不穏さをなにげにはらんでるんですよね。
おいおいミステリかよ!って。
とりあえず、ハリウッドでありがちな家族愛、兄弟愛の押し売りになってないのは好感もてましたね。
助けて当たり前、になってないからこそ、終盤の進行に気持ちを揺さぶられる部分も大きかったわけで。
伏線の張り方も上手。
洞窟のシーンもそうですけど、ジャッキを車のトランクから探そうとするシーンなんて思わず膝を打った。
あのどうでもいい場面がここで活きてくるのかあ!ってなもの。
減圧症を救助の足かせとし、タンクに残った残存空気をタイムリミットとする設定も危機感をつのらせる演出として申し分なし。
妹の命をつなぐために予備タンクを何度も海底に届けてやらないといけないんですけどね、海底30メートルを頻繁に行き来してちゃあ、姉のほうが潜水病で死んじゃうわけだ。
もう、手に汗握る緊張感とはまさにこのこと。
時間は限られてる、でもできることは限りなく少ない、もちろん助けは来ない、さらには冬の海で死ぬほど寒い、いやもうね、見てて何度「あ、詰んだ」と思ったことか。
徹底してダイビングのリアルにこだわったことも功を奏してる、と言えるでしょう。
なるほど、そういう仕組みになってるのか、と納得することしきり。
それゆえ、最後の逆転の発想が光ってくる。
似たような作品はたくさんあると思いますし、近年じゃあ海底47m(2017)とか、見応えのある秀作もたくさんありますが、予想外に似て非なる一作だったのでは、という気がしますね。
物語のルール作りに拘泥するだけではなく、血の通ったドラマとして二段構え三段構えのスリルを構築していたのがお見事。
姉が使えなさすぎてイライラする、とか酷評してらっしゃる方もいらっしゃいますが、肉親が海底で数十分おきの酸素ボンベ交換を待ってる状況におかれちゃあ、トム・クルーズでもないかぎりこんなものだろう、と私は思いますね。
やっぱり北欧はパッケージが同じでも中身が一味違うな、と思った秀作。
ともあれ、以前も書きましたけど、あたしゃ絶対にダイビングはやらない、と再び固く心に誓いましたね。