鬼姫、黒いねこ面、生き人形、キツネ目の少女

1967年初出 楳図かずお
秋田書店サンデーコミックス 

幼い頃に読んで私のトラウマになった1冊。

一国の姫の影武者に仕立てられた少女の悲劇を描いた時代劇なんですが、なにが凄いかって、姫のしぐさ、言動を真似ているうちに徐々に自分自身をコントロールできなくなり、姫そのものに成り果ててしまう少女の心理描写のうまさでしょうね。

とても優しい女の子だったのに、平気で虫を握りつぶしたりするようになるんです。

心は否定している。

でも、そう振舞うことをどうしても抑えることが出来ない。

つまり、人はその立場、環境によって形作られる、もしくは容易に洗脳されてしまう、ということをこの作品は暗に示唆しているわけです。

自分は自分のもの、と思っていた少年期の私にとって、この概念はひどく衝撃的でした。

エンディングがまた悲しいんです。

全く救いはありません。

救いがない故に、優しかった少女の本来の純粋な心があらためて浮き彫りになった、ともいえると思います。

いやもう男性の感性じゃないですね。

よくできた寓話にも似た傑作だと思います。

1966年初出 秋田書店サンデーコミックス

先祖が犯した罪が、呪いとなって現代によみがえる恐怖を描いたホラー。

やってることは定番中の定番ともいえるテンプレートな怪談話で、はっきり言ってそこに新鮮味も目新しさもありません。

また、発表されたのが66年ということもあって作者の絵柄も定まってなくてですね。

昔の古い少女向けホラーを読まされてる気になること、うけあい。

時代が時代ですから仕方ない、といえば仕方ないんですけど、よっぽどのマニアじゃない限り、手を出さぬのが無難ではなかろうか、と。

それとも当時は少女漫画の世界において、これが画期的だったりしたんでしょうかね?

うーん、わからん。

で、最大の難点は、なにゆえ江戸時代の呪いが突然現代になってよみがえったのか、明らかにされてない点でしょうね。

猫が7代たたると言うなら、主人公一家の祖父母、曽祖父母も災禍に見舞われてなきゃおかしいはずなんですよ。

あらためて今、手にする価値があるとは言い難い一作。

1960年初出 秋田書店サンデーコミックス

ホラーというより、人形を自分の娘のかわりに可愛がる変わったおばさんと、人形の世話係として同居することになった少女の奇怪譚、と言ったほうがいいでしょうね。

で、最大のトラップは、別段人形は人のように生きてるわけではなく、最後までただの人形である、という点。

タイトルに誘われて「きっと人形が夜中に歩いたり、ものを食ったり、髪の毛が伸びてきたりするんだ」と勝手に思い込んで手に取ると、大きく騙されることになります。

稲川淳二や山岸凉子の「生き人形」等、あの辺りの現代古典な心霊譚をイメージして読むと、とんでもない目にあうこと間違いなし。

プロットの発展のさせ方次第では、人形の母を気取る女の心の闇に切り込んだ心理ドラマとして、いくらでも怖くなりそうな(別の意味で)気がするんですが、本作もこれまた時代のせいか、徹頭徹尾少女漫画でしてね。

けなげでがんばりやさんな少女と、人形を狙う悪者の勧善懲悪な物語になってたりします。

これを今楽しめ、というのははっきりいって酷。

絵も全盛期とは全く違いますしね。

当時の少女読者たちの思い出に生きる漫画として、そっとしておくのが一番いいように思いますね。

1962年初出 秋田書店サンデーコミックス

ホラーというより、やまびこ姉妹のおしゃまな活躍譚と言った方がいいでしょうね。

この作品がやまびこ姉妹シリーズの一編である、と認知されてるのかどうかは知りませんが、とりあえずキツネが化けて出たり、人にのりうつってとんでもないことをしでかしたりはしません(そういうギミックはありますけどね)。

至極現実的に物語は結ばれていたりする。

ま、普通にやまびこ姉妹はかわいいんで、姉妹を目当てに読む、というのはありかもしれません。

ちなみに少女漫画です。

おどろおどろしいのは表紙だけ、というオチですね。

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