半蔵の門

1978年初出 小池一夫/小島剛夕
小池書院道草文庫 全15巻

小池版、徳川家康。

タイトルにある半蔵とはもちろん服部半蔵のことで、言わずと知れた伊賀忍者の大首領。

家康と半蔵の主従を越えた信頼関係を物語の軸に、波乱の戦国時代を描いた作品。

ああ、小池一夫もこういう原作を書くんだなあ、というのが私にとっては意外でしたね。

実在の歴史上の人物を配し、大きく史実を捻じ曲げずにストーリーは進んでいくんです。

そこに拝一刀も唇役腕下主水も登場してこない。

史実をベースに、ケレン味たっぷりに、オリジナルキャラで滅茶苦茶やるのが流儀か、と思ってましたんで、この真っ当さは幾分拍子抜けではありました。

もちろん登場人物の関係性や性格設定は大きく改変されている、と思います。

そもそも半蔵と家康がこうも濃密に心を通わせあった間柄であったはずがない。

読みどころはそのあたりでしょうね。

小池氏は戦国時代における家康や武将たちをどのように分析していたのか、その独自解釈が実に興味深いのは確かです。

週刊現代に連載されていたことが作風を従来より控え目にさせていたのかもしれません。

私が読んでいて一番おもしろかったのは、終盤、半蔵が武田信玄を単身暗殺するために、ジジイに化けきって、素っ破の女首領とねんごろになってしまう展開ですね。

こんな突飛な話を真実味たっぷりにもっともらしく描けるのはこのコンビ以外にありえないと思う。

残念なのは信長惨殺、家康天下統一のくだりが駆け足で終わってしまったこと。

このペースで描いてたらとても天下統一まで15巻では無理だぞ、と思ってたら案の定。

人気の問題なのか、他の要因があったのかわかりません。

特に本能寺の変はどう描かれるのか、楽しみにしていただけに残念。

尻すぼみな印象はぬぐえませんが、一風変わった戦国絵巻として独特なポジションにはあると思います。

個人的にはもっと半蔵目線で物語が語られても良かったのでは、と思ったりもしますけどね。

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