実験人形ダミーオスカー

1977年初出 小池一夫/叶精作
スタジオシップ劇画キングシリーズ 全19巻

人間と寸分違わぬ等身大人形を作る天才人形師、渡胸俊介の奇矯な放浪の日々を描いたアダルトなアンチヒーローもの。

この作品が独特なのは主人公渡胸俊介が、オスカーと呼ばれる別人格を心に巣食わせた2重人格者である点でしょうね。

悪魔のごとき技術を持つが、普段はチビで気弱な冴えない人形オタなんです。

それがなにかのきっかけでスイッチがはいると、突然自分を超人間などと言い出し、肉体は筋骨隆々になるわ、やたら頭が切れるわ弁はたつわ、短小がありえない巨根になるわ、と見違える変貌を遂げる。

オスカーが表に現れて居る時にはFBIでも手をこまねく事件を自らの主導で、人形を使って解決したりするので、IQや洞察力、判断力すら飛躍的に上昇する、と考えていいように思います。

ああこれは結局のところ、男性読者諸氏の変身願望を満たす作品なんだろうな、と思ったりもしました。

小池現代劇画ではよくあるパターン、女性からのもてっぷりも半端じゃないです。

次から次へとなで斬りです。

マッチョイズムの極みというか男根崇拝というか、いったん情交をかわしたら全部の女性キャラが「こんなの初めて」って、言いなりになるんだから、途中でちょっと阿呆らしくもなってくるほど。

男性向けグラビア誌GOROに連載された作品ですんで、きっちりニーズに答えた、ということなんだろうなあ、とは思いますが。

私がこれは凄いな、と思ったのは叶精作の精緻な作画ですね。

特に女性の絵に関してはこの時代、右に出る描き手はいなかったのでは、と思えるほどなまめかしく色っぽい。

下着やガーターベルトのレースまで丁寧に描かれてるのには本当に感心しました。

ストーリーそのものは巻を重ねるにつけ「オスカー色まみれ大活躍譚」みたいな方向にどんどん進んで、天才人形師の何を描きたかったのか、2重人格者としての心の葛藤はどう始末をつけるのか、みたいな部分が置き去りなまま、なんとなく過去を回想して中途半端な状態で14巻にて一端終わります。

別紙にて再開された後も大きく路線は変わらず、最後は家庭にその帰着を求めてこじんまりまとまっちゃうんですが、やっぱり欲を言えば2つの人格が融合するその先を見たかった、というのはありますね。

そういう方向性に中盤いきかけたんですけどね、なんとなく軌道修正されてしまった。

人形師と言う存在が、現在社会の中でどう機能するのか?というオチもこれではあまりに儚いし、仕事として成立するようにも思えない。

設定や素材はとても興味深かったんですが、作品を貫くテーマがあいまいだった、といったところでしょうか。

アダルト版超人ハルクみたいなもんだ、と思って読むのが正解かも。

それはそれでまたちょっと違うか。

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