2022 アメリカ
監督 ロバート・エガース
脚本 ショーン、ロバート・エガース

どこかクセのある復讐譚だが、それがクセになるかも
12世紀の作家、サクソの著書に登場するアムレートの物語を翻案した復讐譚。
ストーリーそのものは割と単純で、いわゆる王家の血で血を洗う権力闘争に巻き込まれた王子さまが、長い雌伏の時を経て、やがて敵討ちに挑む、ってな内容で。
物語に意外性や驚きはほぼない、と言っていいでしょう。
予想を裏切る展開もさほどなかったですしね。
いうなれば一本道。
脇目も振らずに、ただ本懐を遂げるべく、地をなめ泥をすすり、機会をうかがう王子の姿を描写。
眼に新しかったのは、当時のヴァイキング社会の風俗や文化、宗教観をじっくりと丁寧に描いていた点、でしょうか。
二コラス・ウィンディング・レフンのヴァルハラ・ライジング(2009)をふいに思いだしたりもしたんですが、本作、レフンの作品よりよりもずっと金かかってる上に仕事ぶりが優秀なように感じましたね。
9世紀の北欧なんて全くの門外漢なんですが、それでも何が起こっていて、どういう価値観に支配されているのか、ちゃんと理解できましたし。
しかし、ロバート・エガース、前作ライトハウス(2019)からいきなりこれかよ、って。
ああも内省的なややこしい映画発表するぐらいだから、きっと今後はカルトな道を進むんだろうなあ、と思いきや、いきなりヴァイキングが肉弾相打つリベンジアクションですからね。
ま、これはこれで冒険だったと思いますけどね。
9世紀の北欧にそれほどニーズがあるとは思えないですし。
よくぞまあ、大金投資したやつがいたもんだな、と。
それにきちんと答えて作品ヒットさせたんだから大したもんですけどね、ロバート。
とりあえず、やたらテンションが高いというか、インド映画風の妙な熱量に満ちてるのが特色ですかね。
復讐譚というエンタメであることは間違いないんですけど、そこはそんなに力入れなくても・・・と思えるようなシーンにやたら心血注いでたり、一皮むいたら別のものが顔を出すんじゃないか?と不安になるような含みがあったりするんです。
クライマックスにおける溶岩流に囲まれた場所での決闘シーンなんてその最もたるもので。
どういう演出なんだこれは、と一瞬ひるんでしまうぐらいなにかがトチ狂ってます。
あとはニコール・キッドマンの怪演でしょうね。
並みいる屈強な男どもを楽にねじ伏せる勢いで狂気の悪女を熱演してて。
いや、もうね、マジでびっくりした、お前だったのかよ!みたいな。
ストーリー最大の起伏と言っていいと思います、彼女。
総ずるなら、よくある復讐譚ではあるんだけど、エンタメの割には変なクセがある映画、といったところでしょうか。
不思議に楽しめてしまった、そんな一作でしたね。
しかしここからノスフェラトゥ(2024)へ、ってのがまたすごいな、この人。
本人の中では、何を撮ろうと最初から全くブレてるつもりはないのかもしれませんね、ひょっとしたら。
ねじレート 82/100

