マルホランド・ドライブ

アメリカ 2001
監督、脚本 デヴィッド・リンチ

ツイン・ピークス(1990~)を世界中で大ヒットさせたデヴィッド・リンチが、再びその手のミステリに挑んだ、と当時大きく話題になった一作。

難解、と評判な作品ですが、もう本当にその通りで。

とりあえず一回見ただけではなんのことやらさっぱりわかりません。

そもそも私はツイン・ピークスにあんまりはまらなかった人でして。

ツイン・ピークスがアメリカのTVドラマシリーズである、ということすら知らなかったんですよね、当時は。

なんせネットが普及する以前の作品だからとにかく情報がなくて、なんかヒットしてるらしいという噂だけを頼りに、ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最後の7日間(1992)を先に見てしまい、なんなのこれ?とただただ混乱させられた馬鹿野郎が実は私でして。

本編(テレビシリーズ)の前日譚やがな!という話でね。

前日譚なんでね、本編見てないとわかんない部分もいくつかある上に、スッキリ終わってないわ、変に難解だわ、で頭は沸騰。

その後、本編を追い始めるも、時系列が整理できてなかったのか、それとも馬鹿だったのか、いつになったら真相が明らかになるんだよ!(もうとにかくひっぱるんですよ、このドラマ)と中盤で途中放棄。

兎にも角にも最初の出会いが悪かった。

未だ見直す気にもならんという。

なのでツイン・ピークス再び!と言われてもさっぱり盛り上がんないわけですよ、私個人としては。

それでも見るには見たんですよ、リアルタイムで。

正直に言おう、途中で寝た。

あまりにわからなすぎて。

なんでこれがカンヌで監督賞?とマジで意味がわからんかった。

今みたいにネットでちょいと検索すりゃネタバレやら考察やらずらずら出てきたりはしないものだから、わからなけりゃそれまで、でね。

雑誌媒体に徹底解説する記事でも載ってくれないことには打つ手なし。

私の周りには、あの頃映画好きもいなかったからなあ。

今思えば、私のデビッド・リンチに対する苦手意識はこの作品で完全に醸造された気がしますね。

ま、ロスト・ハイウェイ(1997)で手ひどく振り落とされてはいたんですけどね。

以降、一切見てないですもんね、リンチ(その後1作しか撮ってないけど)。

どうせまた小難しいことやってんだろ、みたいな先入観に囚われちゃって。

でまあ、そのまま知らん顔を決め込んでも良かったんですけど、閉店が決まってるTUTAYAで先日偶然目があってしまったんだよな、ナオミ・ワッツと。

多分もう、この機会を逃したら一生見ることはない。

あれから20年近くが経過してることだし、今ならひょっとしてわかるかもしれない・・・と思っちゃったんですよね。

で、この文章の冒頭に3行目に話は戻るんですけど。

いやー、20年経ってもわからんかったわ、よくまあこんなの世に出せたな、デヴィッド・リンチよ。

独りよがりとは言わないけど、さあ、私の作り上げた謎めく迷宮の秘密を解き明かしてごらんなさいおほほほほほほほ!って感じなんですもん。

すげー大上段なのは間違いない。

興味を持ってもらえなければそれまで。

どんだけ強気なんだよ、という。

まあ、どういうことなんだろう、これは?と色々考えてみたくなる怪しさ、猥雑さ、奇妙さがあることは認めます。

「引き」がうまいのは確かだと思う。

その分、突き放し方も強烈なんですけどね。

とりあえず、なんとなく「こういうことなんじゃないかなあ・・・」という想像はなんとかできます。

さすがに何十年も映画見てるとね、それぐらいはわかります。

ただ何を根拠に?だとしたらあのシーンはどういうこと?と問われたりすると、口ごもってしまうわけですね。

もうね、この映画を考察するブログとか動画とかあれこれ出回ってるんでね、そっち見たほうが早いです。

よくまあそんな細かいところまで見てるなあ、と感心するレベルでみなさん自説を展開しておられますから。

私がここで言えるのは、リンチは意外にもイレイザーヘッド(1976)で実は全てやり尽くしていたのでは?ってこと。

100歩譲ってせいぜいブルーベルベット(1986)ぐらいまでな気がしますね。

以降は見せ方や趣向、手管を変えて作品を重ねていったような。

多分、リンチの頭の中にはずっとね、イレイザーヘッドで表現したシュールでグロくて狂気的なイマジネーションが渦巻き続けてるんだと思う。

年齢を経て、ソフィストケイト、洗練されはしたものの、未だ甘やかな悪夢に浸ってるんだろうな、と思ったりします。

ラストシーンとか強烈ですしね。

感じ方は人それぞれでしょうけど、私は薄気味悪さの向こう側に透けて見える美と言う名の静謐を体現してるようにさえ思った。

そりゃはまる人は猛烈にはまる。

私ですらちょっと鳥肌たったもんね。

いやまあ全然わかってないんですけどね、それでもこの人が天才と呼ばれるのは少しわかったように思いますね。

確固たる世界観を長年ずっと堅持し続けた稀有なる人物、ってことが再認識出来ただけでも再び手に取った価値はあったかな。

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