ウォンテッド

アメリカ 2008
監督 ティムール・ベクマンベトフ
原作 マーク・ミラー、J・G・ジョーンズ

ウォンテッド

2003年に発売されてカルト的人気を博したグラフィック・ノベルを映画化した作品。

ナイト・ウォッチシリーズでロシアの興行記録を塗り替えたベクマンベトフ監督の、ハリウッド進出作でもあります。

暗殺組織と青年の関わりを描いたアクションなんですが、まあ、元ネタがいわゆるアメコミですんで。

はっきり言って相当に荒唐無稽です。

いや、うん、それはない、と急速に気持ちの冷めるつっこみどころが満載なのは確か。

またベクマンベトフが映画化にあたって現実味のなさを補完しようとしてないんで。

細部は詰めきれてないし、なぜそうなったのかよくわからない部分はあるし、ちゃんと説明しなきゃいけないところとかスルーだし。

むしろケレン味とハッタリだけで乗り切ろうとする傾向が強い。

それが最も顕著なのがオープニング。

いや、もうね、無茶苦茶ですわ。

生身の人間がやれるレベルを超えてます。

このシーンだけ見てるとキングスマン(2014)なんてまだまだまともだな、と思えてくるぐらいだから、その気の触れようをとくと皆様にも理解していただけようかというもの。

さらには、拳銃から射出された弾丸の軌道を変化させる射撃術、という作品上のアイディアが当時は話題になったりもしましたが、これもね、深く考えるまでもなくデタラメ通り越してますよね。

ともかく暗殺者たちの超人性になにひとつとして物理的、生理学的根拠がないんですよね。

真面目に見ろ、って方が無理な話。

ただですね、殺された父親の復讐を誓う青年のドラマとしてはそれなりに良く出来てまして。

まさかお前が・・・みたいな予想外のどんでん返しも盛り込まれてて、見応えがないとまるごと切り捨ててしまうのはいささか不憫。

主役を演じるジェームズ・マカヴォイのワイヤーアクションとかもかなり気合入ってますし。

肉弾相打つ派手な立ち回りが全く古びて見えないのは評価していいのでは、と思うんですね。

アンジェリーナ・ジョリーがいちいちかっこいいのも作品水準の底上げに貢献しているように思います。

拳銃ぶっぱなすシーンの眉根を寄せた表情がここまでサマになる女優ってなかなか居ない、と思うんですね。

アンジーが登場するだけで、なぜか俄然シーンが引き締まってくるんです。

それがなぜ今はあのような感じになっちゃったのか・・・って、そりゃいいか。

胡散臭さとか脇に置いておいて、多彩なキャラクターが織りなすドラマやアクションだけに注目できればそれなりに楽しめなくもないのでは、という気もしますね。

ハリウッド資本においてすら、どこか陰りを帯びたベクマンベトフの映像表現が大きく変化してないことを私は好ましく思ったりしました。

嫌いじゃないですね。

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