カナダ 2000
監督・脚本 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
セルDVDにはなぜか「官能の悪夢」などというわけのわからない副題がついているのですが、とりあえず「官能」は期待してもらっちゃあ困る、と制作陣があわてるレベルです。
はてどのあたりが官能?って感じ。
エロチックサスペンスみたいなくくりで売りたかったんでしょうねえ。
ちゃんと見てないのか、と問いたくなりますね。
むしろ内容は後の灼熱の魂にも連なる重いテーマを扱っていたりします。
ぎょっとしたのはオープニング。
いきなり正面を向いた魚が人語を話しだすんですね。
え?なんだこれ、ジュネ?などと私はあわてたんですが、どうやらこれはファンタジーを意識したというわけではなく、監督なりの演出のよう。
最後まで見るとなぜ魚だったのか、わからなくもない小芝居。
つまるところ、仕事に、プライベートに、挫折した女性が、数奇な巡りあわせから愛をつかむ、というストーリーなんですが、同時にこれは何を取捨選択して何を最上位に置くのかを問う物語でもあるように思います。
こんなこと、あるわけない、と思う。
でももしあったら、どうする?という特異な愛憎劇は、突飛ながら、安いラブロマンスにはたどり着けぬ境地を描いているようにも思います。
ラストシーン、逆にすがすがしいかも、と感じたりしましたね。
見る人によって大きく印象を違える作品だと思いますが、私は、監督が新人だったころの作品とは思えぬうまさに唸らされました。
ノルウェー語をあえてイマジネーションを広げるための役割として使う、なんてなかなかできることじゃありません。
ヴィルヌーブは昔から凄かったんだ、と再認識できた1作ですね。