監督、脚本 パスカル・ロジェ これは難解と呼ぶべきなのか、未熟と言うべきなのか。
なんとも判断に困るロジェ監督の劇場デビュー作。
中盤ぐらいまでの印象としては、孤児院を舞台にした幽霊屋敷ものなのかな、ってな感じなんです。
特に珍しい題材、と言うわけでもない。
ヒロインが何故か妊婦さん、というのが戸惑わされる部分なんですが、これ、実は重要な鍵。
ただ、それがストーリー展開上、見落としてはならない大事な伏線になってるのか、というとそんなことは全くなくて。
途中をすっ飛ばしてみても最後には普通に合点がいく作りなのが辛いところ。
とりあえず、中盤ぐらいまで、一体何が起こってるのかさっぱりわかりません。
ヒロインはとりつかれたように屋敷の謎を暴こうとするんですが、そもそも何も起こってないのに、なんでそんなに神経質になってんだ、という話であって。
断片的になにかありそうな気配だけはあるんですが、気配を根拠に行動する主人公に全く同調できない、というのが実際でして。
もう完全に1人芝居なんですね。
観客おいてけぼり。
私なんかは、湖岸から針の届く場所で魚を釣るための「撒き餌」の仕方も監督は知らないのか、とすら思った。
要するに、え、これは一体どういうことなんだろう、と見る側の興味をそそる「謎の提示」のやり方が恐ろしく下手なんですね。
やばい、これは寝てしまうかも、と焦るわけですが、そこは後に名を馳せるロジェ監督、そのままただでは終わらなかったりはする。
愕然の展開が終盤に待ってます。
これ、軽くどんでん返し、といっていい、とは思うんです。
でもそれがね、カタルシスを覚える驚きのオチじゃないのが悩ましい点で。
ものすごく単純に話をまとめてしまうなら、実は気鬱だったんだね、ということなんだと思うんですが、それをテーマとするのにあまりに雑然と余計なものを詰め込みすぎてて。
そのわりには必要と思われるシーン、描写が欠落していると感じることもあまりに多く。
どうしたものか、この映画、ってのが正直な感想。
やろうとしてることは間違ってない、と思うんです。
私がひっかかってるのは、それをどうまとめ形にするのか、という部分。
ただですね、ふいにポランスキーの反撥を思い出したりもしたんで、ひょっとするとこれはこれで正しい、と言う人もいるかもしれません。
ホラーどころか、どこか内省的である、と感じる特異性がさすがはロジェ、と思ったりはしました。
まあその、出来はともかくとして、なんですけどね。