ザ・ロイヤル・テネンバウムズ

アメリカ 2001
監督 ウェス・アンダーソン
脚本 ウェス・アンダーソン、オーウェン・ウィルソン

老境に至って破産宣告を受けた父親が、バラバラになった家族となんとかよりを戻すべく、あれこれ姑息に画策する様子を面白おかしく描いたコメディ。

いかにもアンダーソン監督らしい、独特の趣がある作品です。

淡々とストーリーは進行していくのにも関わらず、妙なくすぐったさがある、とでもいいますか。

そもそもですね、さあ笑わせますよ、と意気込んでないし、意図してオフビートに徹してるわけでもない、と思うんですよ、この人って。

ただ飄々としてる、ってのが一番適切な形容では、と思ったりもするんですが、それが何故かおかしく感じてしまう。

厳密に言うなら別にコメディでもなんでもないのでは、と見てて感じたりするんですが、結果的に喚起される感情はやっぱりコメディと相似するよな、と思ったり。

これはもうセンスと呼ぶ以外ないですね。

3作目にして自らのブランドを確立していることは間違いない。

そこは前作天才マックスの世界よりあきらかに精度を上げてきてるし、無駄も排除してきてると思います。

設計図面にヌケや杜撰さがみあたらないんですよね。

この手の物語にありがちな感動路線に落とし込もうとしないシナリオも私はいいと思う。

極端なことを言うなら、この映画、別段なにも起こってないんです。

これだけ大人数の役者を集めておきながら、すべてを総括するするようなわかりやすい着地点が用意されてるわけでは決してない。

拡散していた家族それぞれが、ほんの少しの接点を経て、また再びおのおのの道へと戻っていくプロセスを描いただけ。

ちょっとした行き違いや、開いたままだった心の傷口が、少しだけ修復されたかも?程度のさりげない内容なんです。

けれど、だからこそ、現実ってこういうものだよなあ、って共感できるというか。

あえて劇的にせず、派手な演出に拘泥しないことが、逆におかしな一家の「人並みに普通な部分」を浮き彫りにしていたように思いますね。

そういうのが多分本質的な部分での「人間を描く」ってことなんだろう、と私は変に得心したり。

万人にうける映画ではないかもしれませんが、私は不思議に好きですね、この作品。

ジーン・ハックマンが父親役を好演してます。

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