ライフ・アクアティック

アメリカ 2005
監督 ウェス・アンダーソン
脚本 ウェス・アンダーソン、ノア・バームバック

相も変わらずなんともまー変な映画を撮る人です、このアンダーソンって人は。

海洋冒険チームを編成して、その探検ぶりを記録映画として発表し続けている男の凋落気味な晩年を描いた作品なんですが、これはファンタジーなのか、それともシラフなのか?ってところでまず悩まされましたね、私の場合。

探検映画の予算の問題にまつわるドタバタや、主人公ズィスーが20年以上会うことのなかった息子との邂逅など、物語の骨子はひどく現実的に入り組んでてドラマ性は高いんですが、反面、ジャガーザメを筆頭に登場する海洋生物はどれもこれも珍奇でほとんどが空想の産物であり、ジャケットにもなってる海中探査船もどう見たところでマンガとしか思えないチープな作りでまるで安いSFのようだったりする。

本気なのかふざけてるのかさっぱりわからん、とでも言いますか。

基本前向きに笑わせようとしておらず、登場人物達の妙なボタンのかけ違いがクスクス笑いを誘発する路線はいつもどおりなんですが、今回はそこに非現実を持ち込んだことで全体像がさらにわかりにくくなってるきらいはありますね。

古き良き海洋冒険映画へのアンダーソン流のオマージュ、と考えるのがらくちんでいい感じですが、それだけじゃ全部語りつくせない、と思えるのがこの作品の困ったところ。

とりあえず物語の構造そのものは前作ロイヤル・テネンバウムズと似通ったところがあるな、とは思った。

自己中心的な強権的オヤジの迷走、というテーマは器こそ違えどほぼ同じでしたし。

ひょっとするとロイヤル・テネンバウムズで描ききれなかったことを空想の世界をもまじえて補完したかったのかもしれません。

ただまあ、だとしてもですね、ところどころリアルから逸脱しがちな分ね、とっつきにくい、というのはあったかもしれないですね。

実際、私も前半はあんまり集中できなかった。

徐々にエンジンの回転数があがってくるのは終盤。

このまま終わっちゃうとやばいかも・・・ってところで思わぬドラマチックなシーンを用意してくるのはやはりさすが、と褒めるべきでしょう。

ウィレム・デフォーのおかしなキャラや、統一された赤い帽子を全員がかぶってる画等、小ぶりにくすぐってるシーンは多いし、やたらデヴィッド・ボウイの楽曲が散りばめられた音楽も印象的で、従来のファンが見て損した、と感じることはないだろうと思うんですが、 まあやっぱりクセ球な映画ですよね。

ちゃんと球を選球せずにぼーっとバッターボックス立ってると、気がつきゃ三球三振してそう。

はまる人は猛烈にはまるでしょうが、ダメな人は徹底的にダメ、そんな一作でしたね。

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