2023 アメリカ
監督 エリザベス・バンクス
脚本 ジミー・ウォーデン
偶然コカインを口にしてしまった事で完全にキマってしまった熊に、運悪くも襲われてしまう人たちを描いたパニックスリラー。
またバカなアイディア考えついたやつがいるよなあ、ほんとしょうがねえなあ、と最初は思ったんですが調べてみたら実話ベースということらしくてマジで驚きました。
アメリカじゃあ熊ですら薬物汚染されてんのか!って。
そもそもなんで山の中にコカインがキロで落ちてるんだよ!って話なんですけど、これはマフィアの不手際だったみたいで。
いくらアメリカだからって、そこかしこに薬物ばらまかれてるわけじゃない(あたりまえだ)。
そりゃま、現実にお薬キマってる熊がいた、なんて事件があったら映画化してみたくもなるわな。
気持ちはわかる。
わからないのはこんな映画オタ臭全開な題材をエリザベス・バンクスが監督してることで。
セックス・アンド・ザ・シティやピッチ・パーフェクト(2012)のイメージしかないんだけど(そういえばスパイダーマンに出てたな)興味あったんでしょうかね?薬物熊の大殺戮劇を監督することに?うーん、興味あるようには思えんのだがなあ。
オタク気質な若手監督が大喜びで撮る、というのならわかるんですけどね。
ま、そのあたりは作品の熱量みたいな部分に反映されていたかもしれません。
なんかね、どこか真面目なんですよね。
いろんな人物の思惑が交錯するのはかまわないし、群像劇として成立させたかったのもわかるんですけど、コカインでラリってる熊って素材そのものがばかばかしいしナンセンスなんだから、ネタ相応に羽目を外してふざけてもらわんことにはこっちが困ってしまうわけです。
真面目に見れねえよ、って話。
だって熊が凶暴化して人を襲うってのは脚色ですからね。
現実には過剰摂取で熊、死んでますから。
それをあえて人食い熊に設定して演出するなら、残酷さもいとわずスプラッターホラー並みに血糊ぶちまけてほしいし、コカインベアをキャラ化するぐらいのつもりで仕草や行動様式にこだわってほしかった。
中盤の救急車が暴走するシーンはまあまあだったんですけどね、それ以外がね、どうにも控えめで奥手なんですよね。
すごくちゃんと作ってあるのは認めます。
エリザベス・バンクス、きちんと映画制作を勉強してるな、と感心した点もいくつか。
でも、これじゃあ盛り上がらない。
みんなが期待してるのは破綻も恐れぬ暴走っぷりであり、紙一重のデタラメさだと思うんですよね。
極端を言うなら、整合性とか辻褄とかちゃんとしてなくても良いんですよ。
バカ映画を全うして欲しかったんですよね、だってコカイン・ベアなんだから。
うーん、もう少し過激に笑わせて欲しかったですね。
しかしこの作品が遺作とはなあ、レイ・リオッタ。
ファンというわけではなかったけど、彼が最後にマフィアを演じてるのを見れただけでも収穫だったのかもしれません。