2019年初出 四方山貴史
小学館裏少年サンデーコミックス 1~5巻(以降続刊)
まあ、よくある異能バトルなアクション漫画かな、と最初は思ってたんです。
ジョジョってことはないだろうけど、高橋慶太郎とか広江礼威に準拠する、みたいな感じの。
なんせ今どき退魔師だもんなあ、まさか令和の孔雀王ってことはあるまいが、安心はできんな・・・などと考えてた。
早い話がなめてかかってた。
だってこの手のオカルトアクションを匂わせる漫画って、ほんとハズレが多いですから。
そしたらだ。
オカルトアクションに間違いはなかったんだけど、これがなんだか不思議に面白くて。
とりあえず、サブキャラも含めて恐ろしくキャラが立っている登場人物ばかりなのは間違いないですね。
作者はかなりの映画好きみたいですが、己の趣味全開に、まるでタランティーノや昔の殺し屋映画に登場してきそうな連中ばかりが物語に参入してくるのには思わずニヤリ。
どこか漫画のキャラっぽくなくて、変な写実感があるんですよね。
で、特筆すべきはそんな犯罪映画のキャラみたいな連中が、出所不明のオカルトなサイキックや呪法を自在に操ったりすること。
つまり、漫画と言う媒体において、映画の世界ではあまりお目にかかることのない「サイコな悪役がほんとにサイキックを使いやがった」ってな状況を体現してるんですよね。
なかなか映画じゃここまで冒険はできんだろ、と思える強引さ、荒唐無稽さにこの作品の面白味がある。
いい意味で闇鍋というか、ごった煮で。
なんせキル・ビルにでも出てきそうな女殺し屋が天狗を使役したかと思えば、主人公はアフリカで謎の悪霊にとり憑かれてマッドメン状態だし、相棒はウサギ耳で攻殻機動隊ばりにデジタルの申し子ですから(文字で書くといっそうわけがわからんな)。
一方向にパラメーターが歪な多角形を描いてないんです。
もう、びっくり箱的になんでも飛び出してくる。
なのでバトルに次ぐバトルみたいな少年ジャンプ的展開が続いてもうんざりしない。
あまりになんでもありなものだから今度はなにをやらかすんだろう?みたいな部分で予測がつかず、期待値が下がらないんですよね。
しかしこれで破綻してない、ってのがすごいな、とつくづく思います。
なんだろ、古い話で恐縮なんですけど多分来留間慎一は魔神伝(1986~)でこういうことがやりたかったんだと思う。
令和になってようやくオカルトアクションとエンタメを肩肘張らずに融合できる人が出てきたか、って感じですね。
すごく劇的な着地点や、意外すぎるオチは用意されてないかもしれませんが、シンプルにここまで多彩な(埒外の)バトルの演出がある、というのはジョン・ウィックにも匹敵するのではないかと。
なんだかんだいってこういう漫画が一番手に取る回数多いんだよな、と思ったりします。
目新しいなにかがあるとか、斬新なわけじゃないけどなんだか続きが気になってしまうタイプの漫画ですかね。