ミッドナイト・ミート・トレイン

アメリカ 2008
監督 北村龍平
原作 クライヴ・バーカー

ミッドナイト・ミート・トレイン

あまりにストーリーが突拍子もない、というのはあったんです。

だってね、人影もまばらな深夜の地下鉄車両内で、スーツを着た男がですね、無差別に乗客を屠殺用のハンマーで殴り殺し、食肉よろしく網棚に吊り下げていくんですよ?

そんな公共の場所で人間解体して、後始末はどうするんだ、と。

簡単に足がついちゃうじゃないか、と。

でも誰にも知られることなく、男の凶行は繰り返される。

どうやら地下鉄は、いつもと違う路線を走っているらしい、というヒントは一応あるんです。

それにしたってあまりに非現実的。

こりゃいったい、なんの妄想なのか、と首を傾げざるを得ないファンタジックな惨殺劇。

物語は偶然それを知ってしまったカメラマンが真相を暴くべく、殺人鬼を追う展開でストーリーを進めるんですが、最初で私はつまづいちゃってるんでどうにもお話にのめり込めない。

まさか夢オチとかじゃないだろうなあ、とどうしても勘ぐってしまう。

また北村龍平がですね、脳天に銃弾が貫通するシーンとか、後頭部をぶん殴られて目の玉が飛び出すシーンとかにやたら凝っててですね、マトリックスのバレットタイムかよ、ってな技法を披露してたりするんですね。

ホラーファンにとってスプラッターな場面はそりゃ見どころのひとつかとは思いますが、あまりに流麗過ぎると逆になんかひいてしまう、ということに私は今回気づきました。

アクション映画感覚なんです、監督。

結局最後まで見て、なぜ殺人者は地下鉄で凶行を繰り返していたのか、何故発覚しなかったのか、すべての謎が解けるんですが、やっぱりこの世あらざる怪奇を演出する上で上手に現実を逸脱できてない、と私は感じました。

もう少し終盤にかけてなにがしかの伏線なり、トラップなりをね、仕掛けておいてほしかった。

スムーズにラストにつながっていかないんですね。

こう落とすのか、と言う意味ではクライヴ・バーカーらしい内容だった、とは思います。

でもそれが北村龍平と噛み合ってない。

とても力の入った作品だ、と思いますし、軽く水準以上の出来であることは認めますが、なんか違うんですよね。

監督の実力は実感できるのに、いざ見終わってみるともやもやが残る、なにかとはがゆい一作。

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