ベイビー・ブローカー

韓国 2022
監督、脚本 是枝裕和

赤ちゃんポストに捨てられた赤ん坊の引取先を、何故か赤ちゃんの実の母と一緒に探す羽目になる、乳幼児売買を副業とする男二人を描いた人間ドラマ。

これがハリウッド製作ならもっとコメディ色が強くなってたんだろうなあ、と思われるプロットですね。

是枝監督らしい、といえばらしい題材。

なので笑いを仕掛けてくる、ってことはあんまりないんですけど、前々作万引き家族(2018)よりは幾分明るめのトーンかな。

私が少し引っかかったのは、万引き家族と同様に擬似家族を物語の骨子としている点。

またその展開に持ち込むの?と、どうしたって思ってしまう。

で、同じことを二度やってる割には、前々作で描ききれなかったことを補足するわけでもなく、新たな切り口が顔をのぞかせているわけでもなく、どちらかといえばダウングレードしているように感じられるのがしんどいところ。

中盤の孤児院の少年が同道してくる流れなんてもう、完全に蛇足ですし。

そうまでして形だけでも整えたいの?みたいな。

前々作で報われなかった少年に「救い」を提示したかったのかもしれませんけどね、そんなの結局周りの人間次第という結論しか導き出せてない時点で作り手の自己満足にしかなってなくて。

穿ちすぎた見方かもしれませんけどね。

わからないですけど、是枝監督はなんだか家族が気になって仕方ないんでしょうね、ここ数年。

どことなく、根はいい人たちの温かい物語になってる(着地してる)のも気になった。

乳幼児売買に手を染める人間とか、はっきりいってどこかネジ外れてなきゃおかしいと私は思うんですよね。

いい人たちを選んで売買してる体になってますけど、それが本当に成立するなら血縁関係にない子供との特別養子縁組とかもっと簡単になってるはずで。

貰われていく子が不幸にならないように、厳格な基準が設けられてるわけでね。

あとは知ったことか、ってな冷酷さが心のどこかにないとやっていけないと思うんですよ。

子供の一生を左右する判断を、決して高額とはいえない報酬のために平気で商売にするおっさんとか、私に言わせりゃ人非人ですからね。

それを実はいい人みたいな演出されてもなあ。

小悪党感は強く印象に残りましたけどね、そこにまともさを忍ばせちゃいかんと思うんですよね。

だって、嘘になっちゃうから。

エンディング、ああよかったね、みたいな場所に誘導されるんですけど、私はなんだか生ぬるいファンタジーを見てるかのような気分になりましたね。

結局、毒があってしかるべきなのに、毒が見当たらないのが私は解せないのかもしれません。

ま、女性警察官二人組の煩悶と懊悩は見応えありましたが。

思い込みと先入観なのかもしれませんが、私はこのネタならもっと強烈に打ちのめしてほしかったですね。

あと、いかにも日本っぽい湿り気が韓国映画には合わないような気がしました。

タイトルとURLをコピーしました