タイ/韓国 2021
監督、脚本 バンジョン・ピサンタナクーン
原案 ナ・ホンジン
タイ北東部の村でシャーマンを務める女が、姪に取り憑いた悪霊を払おうとする様子をテレビクルーが撮影する体で撮ったモキュメンタリー映画。
待ってたよ、ナ・ホンジン!の一言に尽きますね、とりあえずは。
今回、監督じゃなくて、製作と原案だけどさ。
哭声/コクソン(2016)以降、全く音沙汰がなかったものだから、あたしゃ干されてるのか?とすら思ってたよ。
かつて哭声/コクソンの出来には驚愕しましたからね(個人的には韓国映画ベスト5にはいる)、たとえ原案のみだろうと、そりゃ今作には大きな期待もかかろうというもの。
どことなく「すでに哭声/コクソンで消化済みでは?」と思えるような題材ですけど、渇望してましたんでね、もうナ・ホンジンならなんでもいいか、と。
で、肝心の内容なんですけど、ナ・ホンジンにしてはわかりやすいです。
哭声/コクソンで見事我々を欺いた巧緻なレトリックのあれこれは、あまり見当たりません。
むしろ標準的なホラーの枠組みに当てはめようとしてきた気さえする。
結局やってることって、知ってる人は知ってると思うんですが、沖縄のユタがシャーマンとして今も地域に根ざして活動している様子を、タイに舞台を変えて追っているだけですしね。
ところ違えど、世界でシャーマンがやってることって、どこもあんまり変わらないんだなあ、というのは発見でしたけどね、かつて興味を持ってあれこれユタやノロの話を読み漁った身としては、あまり新鮮味はない。
神が勝手に巫女を選んで一方的に障る現象もほぼ同じでしたしね。
ま、ドキュメンタリータッチを選択したことによる臨場感や強い土着臭は評価されてもいいとは思います。
これは間違いなく欧米のホラーではお目にかかれないな、と思われる地域ならではの禍々しさが匂い立っていたことは確か。
ただね、ちょっとやりすぎだったりはするんですよね。
終盤、スプラッターホラーみたいになっちゃってますしね。
そうなってくると「こんな状態でカメラ回し続けられるテレビクルーはいねえ」というツッコミがどうしたって頭をよぎる。
派手な見せ場がなけりゃうけないだろ、と監督が勘案したのかもしれませんけどね。
印象的だったのはラストシーン。
最後の最後にそんな事を言ってしまうのか、シャーマンよ!と、少し驚きましたが、結局スピリチュアルの本質って、そういうことなのかもな、とひどく納得したり。
さんざん恐怖と怪異で煽っておきながら、エンドロール寸前でそんな風に手のひらを返されるのが毒気を抜かれる感じではありましたね。
総ずるなら、モキュメンタリーとしてはよく出来てるし、手法も間違ってないとは思うが、ナ・ホンジンだと思って見ると「あれ、こんなものなの?」と思うかも、ってところでしょうか。
長丁場な割には飽きさせない一作でしたが、最後、あんな風に落とすなら、もう少し信心というか民間信仰みたいなものの正体を掘り下げてほしかった 、と思ったりはしました。