ノイズ

2018年初出 筒井哲也
集英社グランドジャンプコミックス 全3巻

突如田舎町に現れた元殺人犯の処遇を巡る、地域ぐるみの事件を描いたサイコサスペンス。

映画化された人気作品ですが、うーん、どうなんだろ、私の一方的な先入観が強すぎたのか、あれ?こんな風なの?と少し拍子抜けだったり。

なんせ筒井哲也ですんで、圧倒的にぐいぐい読ませることは確かなんですが、行って欲しい方向に物語の舵を切ってくれなかった、ってのが正直なところですかね。

いや、てっきりね、人の皮を被った獣であり、真性のサイコパス野郎を「刑期を終えた」という建前で放逐してしまう現在の刑罰制度の至らなさに切り込んでくれるものだとばかり思ってたんですよ。

それこそ山上たつひこの羊の木(2011~)にも近しいテーマ性で。

なんせ筒井哲也がやるんだから羊の木すらも凌駕するドラマ性、迫真性があるに違いない、とわくわくしながら読み進めていったんですけど、終わってみればあまり法云々には触れてくれてなくて。

むしろ、巻き込まれ、手を汚してしまった村の人たちと警察との攻防、駆け引きに焦点が当てられてたりする。

いや、それはそれで面白くないわけじゃないんですけど、この手の田舎町での事件を巡るトラブル、地域の閉鎖性を描くって、多くの映像作品や小説がすでに幾度もやってることだと思うんですよね。

どうしたって既視感は否めない。

終盤、主人公が追い詰められて選択した判断も、どこかで似たような展開を見た(読んだ)な・・・って感じでしたし、意地悪なことを言うならいかに田舎町だからといって現実味に欠けるような気がしなくもない。

エンディングもなあ、わかるんです、わかるんですけどね、なんか甘ったるい場所に着地しちゃったな、という感じでしたし。

どうせなら3年程度ではなく、20年ぐらい時間をすっ飛ばしてほしかったですね。

事件のケリをつけるのは執念の刑事ではなく、時の流れがもたらす贖罪の意識、ないしは過酷な生活を強いられ続けることへの疲れであった、としていたらドラマの密度も重厚さも全く違ったと思うんですけどね、さて、どうでしょうか。

刑罰制度の不備が物語の起点になってるのに、肝心の顛末を司法の手に委ねてちゃ意味ない、と思うんだがなあ。

決して不出来なわけでもつまらないわけでもないんですが、作者にしちゃあ手綱さばきが甘いな、と思った一作。

うーん、私は筒井哲也に過大な期待をかけすぎなのかもしれません。

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