2014年初出 中平正彦
集英社画楽コミックス 1巻(全2巻)
ある日突然、町を覆った奇妙な壁の内側で、得体の知れない怪物達と生き残りをかけて戦う羽目になる高校生を描いたSFバイオレンス。
物語のお膳立てだけに着目するなら、どこか「ハカイジュウ」と似ていたりもします。
ハカイジュウと似て否なる点は、主人公が敵である怪物と同じような異形の存在に変身できてしまう、という点。
何故主人公は変身できてしまうのか、そもそも怪物とは何なのか、がストーリーの肝。
1巻では変身することによって暴力の衝動にかられ、人の心を失ってしまいそうになる主人公の葛藤に焦点が当てられてますが、まあ、ぶっちゃけ既視感が強い、ってのが正直なところ。
ハカイジュウ云々をさしおいたとしても、怪物化してしまう苦悩なんてもう、さんざん永井豪あたりがやり尽くしてますしね。
目新しさがないんです。
かといって温故知新でもない。
しいては先の展開を期待させるものがない。
作者の出世作、破壊魔定光のエンターティメント性と本格SFの同居に惹きつけられた身としては、なぜ今、これ?と首を傾げざるを得ないですね。
なんせ中平正彦ですんで、お話が進むにつれて全く別物に化けちゃうのかもしれませんが、今回に限っては最初の釣り針につけた餌が悪すぎる、といった印象。
2投目を待つ間に魚(読者)は別の海域へと回遊し始めちゃいますよ、と。
うーん、もっとオリジナリティの高いことができる人だと思うんですけどね、現状、続きを手に取る事はなさそうです。