ブレット・トレイン

アメリカ 2022
監督 デヴィッド・リーチ
原作 伊坂幸太郎

東京発の高速列車でブリーフケースを盗んで運ぶ役割を負った闇組織の男が、車中で思わぬ事件に巻き込まれてひどい目にあうクライム・サスペンス。

走行する列車で事件が起こる、というとオリエント急行殺人事件や、ヒッチコックのバルカン超特急(1938)が有名ですけど、本作の場合、ミステリ色は希薄でどっちかというとガイ・リッチーの系譜ですかね。

悪党どもの利害が錯綜して何もかもが計画どおり進まずに、顛末は二転三転する、みたいな。

ただね、ガイ・リッチーほどの計画性や緻密さはなく、なんだかとっちらかってる感じなのがどうにも脱力でして。

原作は読んでないんでわかりませんが、映画に限って言うなら雑の一言ですかね。

もう今更あえて言うほどのことじゃあないのかもしれないですけど、ロケ地、どう見ても東京じゃないし、途中の駅や街並みも日本じゃないです。

日本は都市部での撮影許可がほとんど下りないから仕方ないのかもしれないですけど、それならそれで無理に寄せることなく、他国を舞台にしてほしかった、と思う次第。

高速列車ってことは新幹線だと思うんですけど、鉄道にまつわる規則やルールも現実に沿うわけでもなくデタラメ。

車内の売り子は金髪のギャルだわ、駅に暴力団風の男が大挙して待ち構えてるわ(捕まるから、普通に)、列車すべての座席を買い取って関係者以外が無人になってるわ(自由席はどうなってるんだよ。というか、不審すぎてJRは切符売ってくれないよ)、高速列車のガラスを素手で破るやつはいるわ(風防ガラスを素手で破れる人間は居ない)、アジア人はほとんど乗車してないわで、もう漫画の世界。

さすがに原作がここまで日本の現実を無視してるとは思えないんで、脚本家が都合の良いように改変したんでしょうけど、日本人がこれを見て「うん、よくできてるね!」と納得するのは到底無理だと思うんですよ。

せめて終着駅である京都ぐらいは有名な駅ビルを一瞬映すぐらい、出来ただろう、って。

あと、京都駅からどの路線を選択しようとも、途中で行き止まりなることは絶対にないんで。

現行路線の状況すら無視かよ、と。

さらに新幹線のレール幅は在来線とは違うんで、そもそも違う路線は走れんわけですよ。

架空の高速列車をでっちあげるのにも程がある、って話だ。

で、そこまでしておきながら列車という閉鎖空間における逃げ場のないスリルがあんまり濃くなくて。

誰も彼もがあんまり頭使うことなく行き当たりばったりでごちゃごちゃやってるだけ。

唯一驚いたのが最後の最後にあの有名なスター女優が出演してたことですけど、それ以外はもうほんとにブラピのスター映画かよ、って有様でして。

真田広之も相変わらず欧米が求めるファンタジックな日本人像を忠実に演じてるだけでしたし(年取って渋くなったな、とは思いましたが)。

まあ、エンタメといえばエンタメですし、娯楽作として充分合格ラインなのかもしれませんけどね、メタバース日本みたいな世界観にのれなきゃなにかと厳しい気もします。

結局、振り切ってないのが私は目障りなのかも知れません。

日本風の架空な世界なら架空の世界で、中途半端におかしな日本語のセリフ入れたりとか、とりあえず富士山とか、変に寄せようとしてくるんじゃねえ、と。

テレビでやってたら見る、ぐらいでちょうどいいかも。

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