ブラック・フォン

アメリカ 2022
監督 スコット・デリクソン
脚本 スコット・デリクソン、C・ロバート・カーギル

70年代アメリカ、コロラド州デンバー北部を舞台とした連続少年誘拐事件を描いたスリラー。

いきなり身もふたもないことを言うようですが、いわゆるシリアルキラーを題材にした映画は実話ベースのものも含めて大量にあるんで、なんら新鮮味がなかったことは確かです。

正直、序盤30分ぐらいはあくびが漏れそうだった。

70年代の物語だからって、70年代のアメリカンホラーの空気感まで意識しなくたっていい、って話でね、ただでさえ既視感たっぷりなのに、それをわざわざ増長させてどうする、と。

当時の作品のオマージュやってるわけじゃないんだし。

ブラムハウスプロダクションはいったい何を考えて、こんな手垢がつきまくって擦り切れちゃったようなプロットに金だしてるんだろう?と途中で不思議に思えてきたほど。

また、イーサン・ホークがねー、サイコキラー役初挑戦なのはいいけど、なんだか冴えなくてね。

珍しい配役だなあ、と興味深く思いこそすれ、強い印象を残すほどの演技は披露できてない。

というかこれ、グラバーの仮面さえつけてりゃ誰でも良かったんじゃないか?と思ったり。

仮面の禍々しさ(外見の特異さ)に負けちゃってるんですよね。

グラバーの台詞回しに関するシナリオの問題もあったかも知れませんけど。

だってね、少年ばかり狙って殺してるってことは、グラバーはショタだった、ってことだと思うんですよ。

それ以外に、少年に執着する理由が見えてこない。

原作があるみたいなんで原作ではあれこれ言及されてるのかもしれませんが、そのあたりの歪んだ性癖、心理を掘り下げていかないと、キャラが単なる「殺人鬼という記号」でしかなくなると思うんです。

結果、恐怖に厚みが出てこない。

R指定を気にしたのかもしれないし、子供を性的対象にすることに恐ろしく敏感になってる国だから(それは正しいと思うけれど)配慮したのかもしれませんが、それならこういうキャラを登場させるな、と思うわけで。

終わってみれば、殺された少年たちが主人公の少年に配線が途中で切断された黒電話にて話しかける、というシチュエーションが結構不気味でよかった、たったそれだけの映画になっちゃってた気がしますね。

サイキックの素養を持つ妹の存在も、ストーリーを盛り上げるのに一役買ってなかったわけではないんですが、妻をなくして子供に当たり散らしてる酔っぱらいの親父が中盤以降、あんまり上手に機能してないんでなんとなく尻すぼみに終わっちゃったというか。

なんで親父と妹に監禁部屋へ特攻させないんだ、と私は思った。

家族のドラマに色気見せるんなら、親父が体を張ってこそ大団円でしょうが、と。

佳作ですかね。

主人公が親友と殺人鬼に抗するための特訓をやるシーンはなかなかよかったんですけど、それも作品のテーマを考えるなら、どこへ行きたかったんだ?って感じではあるな、と今思った。

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