アンテベラム

2020 アメリカ
監督、脚本 ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ

博士号を持つ社会学者であり、人気作家でもある黒人女性ヴェロニカと、広大なプランテーションの綿花畑で過酷な重労働を強いられている黒人女性エデン、双方の暮らしぶりを対比するように描いていくスリラー。

かたや社会的成功者、他方では奴隷扱いさながらの弱者、という二面的構図が何を意味するのか、最初はさっぱりわかりません。

おそらく黒人差別をテーマにしたいんだろうな、というのはおぼろげながら伝わってくるんですが、それをなぜ二層構造にしなきゃならんのか?が、よくわからなくてですね。

同じ女優さんがヴェロニカとエデンを演じてるんで、ひょっとすると過去世と現世を交互に描写してるのかな?それともタイムスリップしたとか、そういうSF的オチなのかな?と色々考えたんですけど、終盤に至るまで答えが提示されることはなし。

でまあ、それがね、色んな意見はあるんでしょうけど、どっちに集中すりゃいいんだ?みたいな感じで私にはいささか散漫にうつって。

奴隷さながらの扱いを受けるエデンの境遇はそれなりにショッキングではあるんですが、いつの時代かわからねど、リンカーン以前はきっとこんな感じだったろうなあ、と想像の及ぶ範疇でのエピソードばかりでしたし、ましてやヴェロニカのセレブな生活とか、もう全然興味持てないわけでね。

もう少し集中して見てたらエデンの奴隷生活の小さな違和感に気づけたはずなんですけど、作品自体にそれほど引き込まれてない自分が居たものだから。

で、肝心のオチですよ。

シャマランの映画のようだ、と称賛している方もいましたが、私は正直、もう少し発想の飛躍が欲しかった、と思った。

もう、オチが全てなんで詳しくはかけませんが、至極合理的に現実と地続きであるからこそ唸らされるのか?というと、そうでもないと思うんですね。

ここまで引っ張っておきながら、安牌をとる(その割にはやや無理筋という意見もあるんでしょうけど)のかよ、と。

あと、エデンが、そのバックボーンを振り返るなら精神的にタフすぎるし、容赦のない決断力、行動力がありすぎ。

ヒロイックに描きたかったのかもしれませんが、アメコミじゃないんだから。

黒人差別をテーマにしたエンタメといえば聞こえはいいですが、プロデューサーが同じだからってゲット・アウト(2017)と比較するほどのものじゃない、というのが私の結論。

演出力が違うし、相対的に小粒だと思う次第。

短編のネタ、アイディアかな、という気もしますね。

ダメだとは言いませんが、記憶に残らなそうな一作。

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