2020 イギリス/アメリカ/カナダ
監督、脚本 イアン・ネルムズ、エショム・ネルムズ
もしサンタクロースが実在していて、政府の庇護の元、職務を全うしていたとしたら・・・を描いたファンタジー。
ピクサーあたりがすでにアニメ化してそうな題材ですけど、想像していた以上に血なまぐさいのが実写ならではの優位性でしょうか。
これを優位と言っていいのかどうか、ちょっと自信がなかったりはするんですけど。
やっぱりね、ファンタジーに現実味というからくりを仕込むなら、温かみや心優しさに配慮する、もしくは着地する物語作りが望ましいように私は思うんですね。
なんかもうリーサル・ウエポン(1987)かよ、って言いたくなるような銃撃戦やふてぶてしさが顔をのぞかせる場面が結構あって。
ま、メル・ギブソン主演ですんで彼の役者としてのイメージを存分に活かそうとしたのかもしれないですけど。
それにしたってなあ、殺し屋と本気でやり合うサンタって、なんかちょっと違うような気もするんですよね。
命を狙われたサンタが殺し屋とタメを貼るほど凄腕だった、というのではなく、命を狙われてすらサンタはサンタとしてのキャラクターを全うしたほうが夢があったように思うんです。
子供にとっては無償の奉仕者ですしね、それが「実は結構怖い人だった」では、全てぶち壊しなんじゃねえかと。
もっとサンタの実存性を信じさせるようなシナリオにできなかったのか?と考えてる時点で、すでに私自身が時代遅れの骨董品なのかもしれないですけどね。
どうせアクションにするなら、もっとブラックに、思わず乾いた笑いが漏れてしまうような悪ふざけをふんだんに盛り込んだほうが良かったのでは、と思ったりもします。
サンタとその配下が経営難なあまり、軍需産業に加担するくだりは面白かったんですけどね。
あと、昨今の多様性とやらに配慮するキャスティングなんでしょうけど、サンタの伴侶が黒人というのはどうなんだ?と。
サンタの起源が、3世紀に生きたキリスト教の主教、ミラのニコラウスだとするなら、黒人の奥さんってのは手前勝手に都合よく改変しすぎなように思うんですね。
これってむしろ、多様性のお題目で臭いものに蓋をしたご機嫌伺いなんじゃねえか?と。
そんなことやったって根っこに潜む何かが変わるわけもなく。
奥さん役の人はいい演技してたんで、なんの文句もないんですが、適所適材を覆してまで体裁をとりつくろったところで誰もなんの得もしないですよ。
やってる側も、見る側もしんどくなるだけ。
発想がいい形に膨らんでいかなかった平均的な一作かと。
せめてサンタの不死性をもっと驚きでもって演出するとか、劇的に描けてたらまた違ったかと思うんですけどね、うーん、スター映画と言っていいかもしれないですね。