アメリカ 2020
監督、脚本 ニコラス・ペッシェ
実はこの作品が、ハリウッド版「呪怨」の第4弾だったなんて全く知らなくて。
制作にサム・ライミが名を連ねてたんで、なんとなく気になって手にとった、というのが正直なところ。
しかしサム・ライミもホラー好きなのはいいけど、今更またホーンテッドハウスものをやるとか、新鮮味がないなあ、ゲット・アウト(2017)やヘレディタリー(2018)は見てないのかなあ、ホラーも新時代を迎えつつあるのになあ・・などと思ってたら根本から間違ってた。
そりゃシリーズものの続編だったら、新奇さとか難しいわな。
それにしても2020年に「呪怨」って・・・。
アメリカでの評判は知りませんが、最初に作られたオリジナルの呪怨が2000年だから、もう足掛け20年ですよ。
いったいいつまでこのネタで引っ張るつもりなんだ、と。
ましてや前作、ザ・グラッジ3(2009)は劇場未公開ビデオスルー作品ですしね。
なぜ今、新作がいけるはず!と判断できたんだろう?と思いますね。
SAWシリーズ並みにマンネリというか、危ない橋な気がして仕方ないんだけどね、私は。
で、肝心の内容なんですが、とりあえず前作や過去のシリーズを復習する必要がないことに関しては、まあ、利口だったかな、と思います。
単独作品として充分お話を理解できます。
これで過去作見てないとわからない、とかだったらあたしゃ放り投げてた。
というのもですね、そもそも呪怨という物語自体がなんらかの因果やアイコンたる怪物の存在するホラーではないわけであって、そこにストーリー性とか伏線とか、滑り込ませにくいと私は考えてるからなんです。
佐伯伽椰子という、呪いの核となる人物は存在しますけど、極端な話、不気味な家があって、怪現象が続き、白塗りの坊主が登場すれば、それもう呪怨ですから。
実際、国内で発表された呪怨2(2003)はオムニバス形式になってますしね。
結局「怪奇現象が巻き起こす、連鎖する恐怖」を描いたのが呪怨だと思うんですね。
そこに大きなミステリや謎はない。
むしろ、王道ホラーに対する意趣返し的なアプローチが目立ってたような気もするんですね。
だってね、伽椰子を含め、白塗りの坊主の存在とか、半分ギャグだなこれは、と当時私は思いましたし。
なんで幽霊が全員、濃ゆいどうらん塗ってるんだよ!って話なわけですよ。
体裁はホラーですよ、けれどさんざん怖さを煽っておきながら、最後の最後で出オチ気味に笑わせようとする節があるというか。
こんなの海外でリメイクできるわけないんですよ、作家性だし、ある意味確信犯的パロディなんだから。
本気で怖がってる時点で、読み違えてる、としか言いようがない。
で、勘違いしたまま「呪い」に物語の焦点を絞ってカメラまわすと何が起きるのか?というと、凡庸な幽霊屋敷ものに落ち着くしかないんであって。
本作の着地点もまさにそこ。
ただ呪われて、バタバタ人が死んでいくだけ。
監督は屋敷の過去の住人のエピソードを織り交ぜる等、あれこれ工夫してるんですけど、やってることの根幹にあるものが、それこそ悪魔の棲む家(1979)やたたり(1963)となんら変わりないのが致命的で。
いやー怖くない。
それでいて既視感たっぷり。
刑事のコンビが主人公、と言う段階でもう手垢感満載。
せめて「呪い」がなぜ伝染していくのか考察する、ぐらいのことをしてくれてたらまた違ったか、と思うんですが、それはそれでそういうものだから、で終わっちゃってるしなあ。
凡作でしょうね。
とても丁寧に作られてる作品だと思いますが、シナリオ、テーマともに凡俗すぎる、といったところでしょうか。
悪いことは言わない、サム・ライミよ、もうやめておいたほうがいい、呪怨に関わるのは。
それ以前に気づかずに見てるんじゃねえ俺!って話なわけだが。