カナダ 2021
監督、脚本 ニール・ブロムカンプ
全身麻痺で昏睡状態にある母と仮想空間で意思疎通して欲しい、と医師から頼まれた娘の身に巻き起こる恐怖を描いたスリラー/ホラー。
仮想空間で意思疎通、ってことはちょっと未来の話なのかな?と思ったんですけど、内容的に未来だろうが現代だろうが全然関係ない調子だったんで、ま、その手のファンのご機嫌伺いな設定、と考えていいでしょうね。
いわゆるメタバース的なテーマには触れもしてないんで、そっち方面の展開は全く期待しないほうがいいです。
というか、むしろ前時代的な悪魔祓いのお話、といったほうが尻の座りが良い。
監督はバチカンの掃討部隊をでっち上げてホラーアクションっぽい味付けをしたり、デジタルな世界観を強調して二番煎じな印象を払拭しようと頑張ってますが、いかんせん本筋になんの新鮮味も意外性もないんですべてが付け焼き刃に終わってます。
そもそもアバターとか、仮想空間とか持ち出さなくてもですね、このオチだったら別段心霊で片付けちゃって全然問題ないと思うんですよ。
それこそ霊媒師呼んできてオカンと霊的に接触した、とかで全然事足りる。
ま、70年代にさんざんあったパターンですけどね。
早い話が心霊もの(悪魔)でしかない物語を、体裁だけ現代風にしたところで本質はなにもかわらんよ、ってことであって。
ストーリーを肉づけるアイディアの、発展のさせ方を間違ってる。
オカンと娘の断絶がサブテーマになってたりもするんですけど、それも今ひとつドラマチックに進んでいかないしなあ。
一貫してSFな作品を撮り続けてきたニール・ブロムカンプ監督ですが、私はこの人、・・どうも怪しい、わかってない節がある、と昔から思ってて、今回、ついに馬脚を現したな、って感じですね。
今回、カナダで撮ってて、メジャーな俳優が誰一人出てないことを鑑みるに、もはやハリウッドで相手にされてないのかもしれませんけどね。
仮想空間を壊れたデジタル映像で表現するセンスとかは割と好きなんですけど、結果的にありきたりなホラーにしかなってないことを、まず自覚すべきかと。
凡作。
多分、半分の予算でもこれと同じものが撮れると思います。
意欲的にやってるつもりであろうことが、全部空振り。