サイクル野郎

1971年初出 荘司としお
少年画報社ヒットコミックス 1~11巻(全37巻)

自転車競技(ロードレースとか競輪とか)のプロを目指して奮闘する少年を描いたスポ根漫画なのかな、と思ったら全然違った。

少年二人組が自転車で日本一周を目論む、ある種の旅漫画だった。

いやいやあのね、自転車の旅もいいけど、高校受験に失敗したから旅ってどうなんだ?って話でね。

自転車で日本一周することで前に進める気がする、みたいなことを主人公丸井輪太郎は独白してますが、お前はインドに焦がれるバックパッカーかよ、と。

時代背景もあるんでしょうけど、16歳が自分探しで旅に出るとか、なにをほざいてやがんだ、としか私には思えなくて。

旅に出て変われるもんなら車中泊YOUTUBERは今頃全員別分野で名を成しとるわ、って。

また周りの人間がそんな主人公を応援してたりするのがなんとも解せなくて。

最終的には立派にやり遂げてこい、みたいな空気になるんですよね。

旅の途中で母親が病に倒れたりもするんですけど、それでも帰らずに「初志貫徹しろ」とお互いが連絡を断つ回が途中であったりなんかもして、もうね、お前は魔王を倒しに行く勇者かよ、と。

いや、普通に帰れよ、って。

総じて現代的感覚とのズレは凄まじいと思いますね。

70年代の漫画は好きで大量に読んでますけど、ここまで昭和から微動だにせず直立不動なのは珍しいな、と。

荘司としおといえば夕やけ番長(1961~)が有名ですけど、もうそこから一歩も動いてないんです。

暴れん坊なはみ出し者が、根拠のない自信と行動力で困難を乗り越えてトラブルを解決していく、という少年漫画の前時代的な方程式を、形を変えて再現してるだけ。

旅先で親切な人達の人情に触れて少しづつ成長していくのかな?と思いきや、そんな様子もまるでないままいつまでも番長気質ですし、輪太郎。

しかも主人公、時折、意味不明にニヒルだったり、影を見せたりするんですよ。

お前のこれまでの人生にそんな大人の深みを醸し出せる経験は欠片もねえだろうが、自転車屋の小せがれよ!(自転車屋をバカにしてるわけじゃないよ)と。

この作品が当時の中高生に支持され、軽い自転車ブームを巻き起こした、ってのがにわかには信じられないですね。

令和に再評価するにはあまりに古色蒼然としすぎてる。

日本各地の風景を旅情を交えて紹介していく、という意味では嚆矢といえるのかもしれませんが、今となっては、当時この漫画に熱狂した人たちの思い出としてしまっておくのが一番いいかと。

本当に申し訳ないんですけど、ギャグなのか、これは?と思えるような作劇、演出も多々あって、真面目に読んでられないってのが正直な感想ですね。

長期連載作品ですし、巻を重ねて化けるのかもしれませんが、私は11巻で頓挫。

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