アメリカ 2019
監督 ロバート・ロドリゲス
原作 木城ゆきと
ジェームズ・キャメロン制作のもと、漫画『銃夢』をハリウッドにて実写化した作品。
しかしまあ、およそ30年前の漫画作品をなんでまた今になって?と思いますね。
攻殻機動隊(1991)の実写版もそうでしたけどね。
攻殻の場合はごく最近までメディアミックスが途切れてないから、また違うのかもしれませんけどね。
本作の主人公アリータがAIだったらタイムリーかとは思うんですが、彼女サイボーグですしね。
上層と下層に分断されたディストピアな未来を舞台とする、ってのも決して新しいとは言えませんし。
映画化はキャメロン15年来の悲願だったらしいですから、時代性とかもう関係ないのかもしれませんが、ハリウッドにしては冒険だったような気がしますね。
興行戦略より作り手の思い入れが勝ってるんじゃないかと。
とりあえず、原作に対するリスペクトは半端ないな、とは思いました。
キャラクターデザインといい、舞台となる世界の作り込みといい、デティールにこだわって銃夢を再現してると思います。
この仕事の細かさはまさにキャメロンだなあ、と思いますね。
アリータのルックスを、人のようでありながら人とは違う異物としてデザインしたセンスもまさにキャメロン。
昨今定番のプリクラ目元補正後みたいになってますけどね、異形を印象づけるための手段としては独自の発想の転換がありますよね。
ただ、それが効果的に働いていたか?というとなかなか難しいところもあって。
これ「見た目は異形だが、実は人以上に人らしい内面を持つ」みたいな場所にエピソードが着地しないと意味をなさないと私は思うんですね。
残念ながら122分をもってしても監督はそこまでアリータの人物像を掘り下げきれてない。
バトルにつぐバトルでなんとなく終わっちゃってる。
チープな恋模様が描かれてたりもするんですけどね、それがアリータの人間性を伝わりやすく浮かび上がらせるには至っていない。
ストーリーそのものの牽引力が弱い、というのもあると思うんです。
アリータの過去を探ると同時に、身に迫る危機を世界すら揺るがしかねない謎でもって演出しなきゃならんところを、単なる恨みつらみでリードしちゃってますしね。
原作に忠実なのはわかります。
でも映画というパッケージで考えた場合、これでは消化不良気味と言われても仕方がない。
続編ありき、みたいな作り方なんですよね。
実際、終わり方もそんな感じでしたし。
相当な自信があったのかもしれません。
プロローグみたいな仕上がりだけど、どうだ、完璧だろう?みたいな。
うーん、出来が悪いとはいいませんよ、でも知らない人はそこまでみんな原作に興味もってないと思うんですよね。
シナリオを担当したキャメロンの思い入れの深さが邪魔をして、脚色すべき、取捨選択すべきが意識の外側に押しのけられちゃってる、とでもいいますか。
あと、シンプルに、ロバート・ロドリゲスはこういうの好きなのか?と思いますね。
あんたもっと違う作風な人じゃない、って。
ハリウッドが映像化した日本の漫画作品の中では、驚くほど改変が少なくてエポックかもしれませんが、原作の中盤ぐらいまでを映像化して良しとするのではなく、ここは一気に最後まで2時間で見せきるべきだった気がしますね。
次があるとは限らないわけですから。
原作の凄みはエンディングにこそあるんで、それをキャメロンの手でどう表現されるのか、見たかったのはそこなんですけど、なんだか行き違ってしまった、そんな作品でしたね。