レイジング・ヘル

2019年初出 荒木光
講談社シリウスKC 1~2巻(以降続刊)

ある日突然、超常能力に目覚めた二人の少年を描くサイキックSF。

能力そのものはサイコキネシスであったり、ヒーリングであったりと、さほど意外性のないものだったりするんですが、設定上面白かったのが「それが悪魔憑きによるもの」としたことでしょうね。

私が2巻までしか読んでないせいもあってか「悪魔憑き」が一体どういうものなのかまるで明かされておらず、想像するにも材料がなさすぎる感じではあるんですが、どうやら他にも同類がいて、教団と呼ばれる組織が存在しているようだ、というところまではお話が展開してます。

風呂敷の広げ方は悪くない、と思いますね。

非現実を嘘くさくなく演出する手管も堂に入ってる。

なんか知らんが忌まわしさ満載なのも、この手の作品の場合、むしろ武器と言えなくはない。

ただね、これは作家性なのかもしれないですけど、どうにも病的に屈折気味で。

もう、全然まともなやつが出てこんのですよ。

卑屈ないじめられっ子とか、頭の線が切れたヤンキーとか、気味の悪いヲタとか、悲劇と向き合えない幼児的な高校生とか。

キャラクターの誰一人として共感できないんで、読んでてすごく疲れる、というのはある。

そこはヒミズ(2001~)以降の古谷実の作品を読んでる感覚に近いかもしれない。

救いが見えてこないんですよね。

というか、何をもって救いとするんだ?と思ったりもする。

最終的に登場人物が全員死んで終わったとしても、まあ、この漫画ならありえるか、と思えてしまうところに私は面白味を感じられなくて。

現代的な閉塞感や鬱屈を誌面にぶつけるのはいいけど、それがエキセントリックさを煽るための方便になってちゃいかんと思うんですね。

ぶっちゃけやってることは魔王ダンテ(1971~)を描いてた頃の永井豪と非常に近いと思うんですけど、この作品に欠落してるのは価値観、イデオロギーの対比で、倫理観や社会性に波紋を投げかけることなく等価値なまま個人主義だから、ドラマにまるで深みがないんです。

まあ、こういう昏い味の漫画が好きな人は一定数存在するんでしょうけど、ニヒリズムに浸ってるというか、なんだか青臭くこじらせてるなあ、と。

というか、これ、最終的にはジョジョみたいな「能力合戦とその駆け引き」に舵を切るしかないんじゃないか?と思ったりもする。

続巻はもういいかな、と。

時々「手を抜いてる?」と思えるような作画のコマがあるのもマイナス。

決してお粗末な力量というわけではないんですが、大きく好みを分ける気はしますね。

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