アメリカ 2018
監督、脚本 ギャレス・エヴァンス

拉致された妹を救うべく、カルト教団が支配する島に単身乗り込む兄を描いたスリラー。
なんせ監督はザ・レイド(2011)のギャレス・エヴァンスなんで。
そりゃもう肉弾相打つド派手なアクションに違いなかろうと。
兄貴、一見華奢で普通そうだけど、きっとカポエラとかシステマとか怪しげな武術の使い手に決まってる。
そこは、ま、元CIAでもグリーンベレーでもなんでもいいんだけどさ。
さあこい、最初にぶっ飛ばされるのは誰だ?
ちょっとぐらいは抵抗してくれよ?ラスボスは柔術使いだった、とか多少の荒唐無稽は許すからさ、とワクワクしてたんですけど、すまん、全然違った。
びっくりするぐらいギャレス・エヴァンス臭は希薄だった。
理屈じゃねえんだよ、腕っぷしで勝負だよ!ってな映画を撮ってた人が真面目にスリラーやってるんだもの。
近作で言うならコロニア(2015)あたりに近い質感ですね、この作品。
で、コロニアが、徒手空拳な乙女が単身閉鎖施設に乗り込む無鉄砲さを息詰まるスリルで演出していたのに対し、本作はどっちかというと牧歌的。
これを牧歌的などと言ってはいけないんでしょうけど、やはり外界との差異をはっきり分かる形でお膳立てできてない、ってのはどうしたってあると思うんですね。
こういう映画って、一見普通に見えるけど全然普通じゃない怖さ、理解の及ばぬ異文化に抗えぬジレンマを、じわじわと小さなすれ違いのドラマで彩ってこそ盛り上がってくるんであって。
不便な田舎の農村的風景だけではどうしたって弱い。
そりゃ厳しい環境で暮らしてたら強権を振るうリーダーがいてもおかしくはないでしょ、と納得できる程度の暮らしぶりしか描写できてないんです。
そこにあえて絶海の孤島を選んで暮らすカルト集団の狂信性はない。
なので、後半の展開がどうしてもとってつけたように感じられてしまうんですよね。
いや、そこまで狂ってたか?この男?とか。
いつのまにそんなルールが出来上がってたの?とか。
もちろん、最初から監督の頭の中でカルト村の異常性は設定されてたんでしょうけど、それ、ほとんど作中で顕在化してないから、という話であって。
「引き」や「煽り」が下手、といいますか。
女神の存在にしたってそう。
こんなおいしいキャラ(ショッキングなキャラ)をちまちま小出しにしてどうする、って。
最後の最後に謎のベールをはがされてこそ「うわっ」と腰を抜かすんであって。
それぞれの素材は悪くないんですが、シナリオ構成が下手だし、ドラマを肉付けていく手管がどうにもまどろっこしかったですね。
もっと面白くなったはずなんだけどなあ、というのが正直な感想。
例えばね、キリストを捨てた男(主人公)が、はからずも別の神に出会ってしまい、宗教的倫理観を再構築せざるをえなくなる展開にもっていくこともできたと思うんですよ、この内容なら。
掘り下げることすらしないですしね。
「使徒」ってタイトルですけど、それが成り行き任せの行きあたりばったりじゃ意味ないわけで。
うーん、もう少し頑張ってほしかったですね。
アクション以外もそこそこやれることはわかりましたが、まだまだ研鑽が必要かと。
主演のダン・スティーブンスが恐ろしく熱演だったので、なんかもったいなかったですね。