ウォー・マシーン 戦争は話術だ!

アメリカ 2017
監督、脚本 デヴィッド・ミショッド

アフガン紛争の終結を図るべく、アフガニスタン駐留米軍司令官として現地に派遣されたグレン・マクマホン陸軍大将の俺様な活躍を描いた戦争コメディ。

なんといっても出色だったのは、ブラッド・ピットのなにかに憑依されたかのような演技でしょうね。

間違いなく外見はブラッド・ピットなんだけど、あたかも中の人が存在するかのような着ぐるみ感があってあたしゃ舌を巻いた。

もう、びっくりするぐらい変な人です。

そこまで自分のイメージを崩してくるか、みたいな。

一応、グレン陸軍大将にはスタンリー・マクリスタル将軍という実在のモデルが居るらしいんですけど、はっきり言って訴えられたら敗訴するレベル。

どこまで模倣してるのかわかりませんが、私は「コロッケが北島三郎のモノマネやってんじゃねえんだから!」と思った。

しかし軍隊の司令官をここまで茶化してくるとは、さすがはアメリカと言う他ありません。

日本だったら関係者がすくみあがっちゃって企画頓挫か、完全なフィクションでモデルは存在しません、とテロップが流れることでしょうね。

そこはプランBならでは、というべきなのかもしれませんが。

ブラピの変な演技を見てるだけで上映時間2時間は余裕だったりするんですが、この作品が興味深かったのは、こじれにこじれたアフガン紛争で米軍が何をしようとしているのか、その裏側を包み隠さず描いた点にあると言っていいでしょう。

副題にある「戦争は話術だ!」ってのは少し過大かもしれませんが、私がなるほどなあ・・と思ったのは、米軍はもう力任せに制圧しようとしてないこと。

じゃあ、何を目論んでるのか?というと、これが笑ってしまいそうになるんですが、現地で人気者になることだったりするんです。

アメリカ的価値観(自由主義経済)による洗脳、ともとれるわけですが、現場の人間ですら「もう力押しではらちがあかない」と思ってるのが問題の根深さを象徴してて。

ほとんどイメージ戦略だったりするんですよね。

で、肝心なのは、現地の人間が全くそんなのは求めてないこと。

この断絶はいったいなんなんだろう、と。

そりゃ何十年にもわたってアフガン紛争長引くわ、とつくづく納得する。

また皮肉なのが、アメリカ本国の大統領を頂点とする執行部が現状を全く理解してないことにありまして。

エンディングのシニカルさときたら、大国の傲慢さ、小回りの効かなさ、わからず屋ぶりをこれでもかと風刺しててなんとも脱力。

しかしデヴィッド・ミショッド監督がこういう映画を形にしてくるとは驚きですね。

てっきりクライムアクションとか、そっちの方面の人だと思ってた。

若干ね、会話劇に注力しすぎてて地味な印象も拭えない一作ではあるんですが、数ある戦争映画の中でも切り口が斬新だと思いましたし、当てこすり満載な内容がコメディ調とはいえ辛口でいい。

秀作だと思います。

バカバカしさの中に侵略戦争の本質を見せつけた一作。

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