アメリカ 2018
監督、原作 ジョナサン&ジョシュ・ベイカー
脚本 ダニエル・ケイシー
現代の科学水準を超えた自動変形式のビームライフルを、偶然にも廃墟で拾ってしまった少年の困難を描いたSF。
ま、主人公、子供ですんで。
世の中をひっくり返してしまいかねない破壊兵器をつい、自宅に隠してしまう気持ちは私にだってわかる。
すげえお宝手に入れちゃった・・・みたいな感覚なんでしょうね。
だが、少年よ、珍しい虫とか、外国のコインとかとはもう次元が違うのだから。
とりあえず級友や家族に相談するぐらいはしてくれ、と。
あまり豊かではない黒人の子供という設定なんで、警察とか公的機関に連絡するというのはまず無理だろうとは思うんだけど(なんせアメリカだし)、私は創作ながら「このビームライフルを使っていじめっ子や先生に復讐しだしたらどうしよう」とヒヤヒヤした。
子供が取り返しのつかなくなることを次々にしでかすヘヴィなシナリオ進行はしんどいし、あんまり好みじゃないんで。
できたらもうちょっとライトな方がいいんだけど・・・と思ってたら、意外や意外、物語は思わぬ方向に。
いや、まさかこのプロットでね、家族ドラマと言っても過言ではないロードムービー風のストーリーを紡いでくるとは思わなかった。
少年、なかなか複雑な生い立ちにありまして。
養子なんですね。
お父さんと兄がいるんですけど、二人は白人で、戸籍上は養父、義兄にあたる。
で、この義兄が救いようのないバカ野郎でして。
悪人じゃないんだけど、真面目に働こうとせず、悪い仲間といつまでも手を切れずに居る。
ある事件をきっかけに、義兄と少年は、追っ手の追跡をかわすために行く先のない旅に出ることになる。
少年は詳しい事情を何も知りません。
「パパが待ってるから」とそそのかされて連れ出される羽目に。
もうね、うまくいくはずがないんですよ、どう考えても。
義兄、バカだから。
行きあたりばったりで進路を決め、どうしようもない状況に置かれたら少年の破壊兵器が炸裂してなんとか難を逃れる、といった有様。
けどそれすらも、いうなればその場しのぎですから。
破壊兵器で広範囲を黒焦げにしたりなんかすりゃ、今度は警察が動きだす、って話で。
でも少年は義兄のことを少なくとも家族だと思ってるんで、矛盾を感じながらも旅に付き合うわけですよ。
なんだこの未来の見えない儚さ、やるせなさは?真夜中のカーボーイ(1969)かよ!とあたしゃ慌てた。
ハンカチ用意しなきゃなんないのか?!と。
超破壊兵器という、中二病を患って無自覚なまま治らないかのような小道具を用意しておきながら、ストーリーラインがやたら大人っぽいんですよね。
もうね、終盤までの展開からは悲劇的結末しか見えてきません。
こりゃどう考えても逆転はないだろうな、と。
そして迎えたエンディング、いや、これなんと言っていいのかわからないんですけど、唖然としたのは確か。
まさかそんな方向から物語をひっくり返してくるとは、といささか拍子抜け。
難しいところだとは思うんですが、誰がファンタジーにしろと言った!と憤慨する諸氏も中にはおられることでしょう。
私の感覚ではこりゃジュブナイルSFだな、といった感じ。
最近の作品で言うならメイズ・ランナー三部作とかダイバージェント三部作とか、あの系統の。
だから駄目だ、ってことではないんですけどね、なんせ終盤までは結構シリアスなアメリカン・ニューシネマみたいな調子だったものだから、落差が強烈過ぎて。
あとは見る人がそのギャップを埋められるかどうか、でしょうね。
壮大な物語のオープニングのようだ、と言ってる人も言いますが、言い得て妙。
ただまあ個人的には続きを見たいとは思いませんが。
黒人の少年が主役を担ったことが、最後の最後に大きな意味を持ってくる仕上がりは悪くないと思います。
ひどく暗示的。
普通は掛け合わせないだろ、と思われるものをあえて掛け合わせた一作、と言えるかもしれません。
新人監督ならではの意欲的作品だとは思いましたね。