イギリス 2018
監督、脚本 ピーター・ストリックランド

着た者を恐怖のどん底に叩き込む呪われた赤いドレスを描いたホラー。
もう結論から書いてしまいますけど、何が駄目って、物語の根幹たる「呪われたドレス」というアイディアが、ありきたりで凡庸極まりないことに尽きるでしょうね。
私は当初「呪われたドレス」は、ストーリーを勢いよく転がすための潤滑油であり、小道具に違いない、と思ってたんです。
違った。
呪われたドレスに焦点を絞ったお話だった。
ホラー好きな方ならわかってもらえると思うんですけどね、呪われた衣服にまつわる怪異譚なんて、それこそ江戸時代ぐらいから(もっと昔からあるかも)無造作に転がってるネタですしね。
幾人もの手を渡り所有者を不幸にしてきた振り袖とか、和帯とか。
楳図かずおの漫画にも似たような話があったな。
今どき、物品に宿る悪意の物語なんて古典も古典、稲川淳二ですら避けて通るような怪談ですよ。
古い落語の演目じゃないんだから。
なんだろ、イギリス(西洋)にはその手の怪談がこれまでなかったんですかね?
そんなことないと思うんだけどなあ、調べたわけじゃないので断言できないですけど。
どちらにせよ、少なくとも日本においては今更通用するような話じゃないと思います。
万物に魂が宿ると考える日本人の宗教観からすれば、そういうこともあるだろうで終わってしまう民間伝承レベルの掌話ですよ。
また、この作品がよろしくないのは、ストーリーを二部構成にしてオムニバス風に仕上げてること。
なんで似たような末路をたどるヒロインをわざわざ前後編で二人も用意する必要があるのか?と。
そこまでして「呪い」を強調せねばならない意図が私にはさっぱりわからなくて。
唯一、興味深かったのは、呪われたドレスをお客に売りつけようとするブランドショップの店員が、なんだかよくわからない非人間的な人物だったこと。
もう全然話が通じないんですよ。
観念的なことばっかり言ってて。
しかもその店員、どうやらショップのバックヤードみたいなところに住んでるらしく。
ネタバレになるんで詳しくは書けないんですけど、私は「お前そのものが呪いじゃねえのか」と思った。
で、多分掘り下げるならその店員の出自であり、生態だったと思うんですね。
その副次物であり、歪んだ収益性が呪われた赤いドレスだった、みたいな展開だったらはるかに面白いシナリオになってたはず。
もし、そういう方向に進んでくれていたら、それこそティム・バートンのダークメルヘンな諸作にも肉薄できていたはず。
誰を主人公にして、どこに力点を置くのかを見誤ってるんですよね。
A24がわざわざ配給をかって出た作品らしいですが、うーん、私はあんまり評価できないですね。
イギリス、つったら幽霊の国でしょうに、こんなことでいいのか?と少し思った。