マー サイコパスの狂気の地下室

アメリカ 2019
監督 テイト・テイラー
脚本 スコッティ・ランデス

マー サイコパスの狂気の地下室

ブラムハウス・プロダクションズ制作のスリラーで、DVDスルー作品なんですが、とりあえず副題、もうちょっとなんとかならんかったのか、と。

「サイコパスの狂気の地下室」ときて、ジャケットがおばさんのどアップで、タイトルが「MA」では、ああ、きっとこのおばさんがMAでサイコ野郎で地下室でなんかやってるんだろうな、とバカでも想像がつく。

もう、全然楽しくないわけですよ、おばちゃんがなにをやらかすのか、最初からわかっちゃってるから。

あまりネタバレに過敏になりすぎるのは良くない、とは思うんです。

これだけ情報過多な時代にあって、全く予備知識なしで作品に接するなんて不可能だし、多少のあらすじがわかったところで大局に影響のない作品もたくさんあるわけですから。

けれど、本作の場合、制作側は「黒人のおばちゃんがなんだか変」というギャップにこそ注力しているのであって。

だからこそシンプルにタイトルを「MA」とし、どアップのジャケットを採用したはずなんです。

え、この善良そうな福々しいおばちゃんがどうしたの?と想像力を掻き立てるところからもう始まってるわけですよ、作品の鑑賞が。

全部ぶち壊し。

大抵のサイコパス野郎は友達の居ない白人男性だったりするけど、一見普通に見えるおばちゃんが狂気をはらむ人物だったりもするんだよ、という「驚き」が副題のせいでいともたやすく台無しですから。

なんでタイトルで全部説明したがるのか、とほんと思いますね。

明らかに触れてはいけない部分に触れて、さあ、これで売上倍増!と担当者が思ってるならさっさと別の部署に移動してもらった方が世のため人のため。

なので今回はあんまりちゃんとした評価はできないかもしれないんですが、それでもあえて筆をすすめるなら、やはり「MAがヤバい人だった」というインパクトがすべてだったかな、という感じですかね。

いかん、話がループしてる。

だってね、割とわかりやすいスリラーなものですから。

あっと驚くどんでん返しや裏切りはありません。

MAの内にはらむ狂気が、何をもって表面化したか?が物語の醍醐味すべてだったりもする。

若干ね、極端に走りすぎ、と思わなくもないんですけど、それも「知らなければ」インパクトに化けたかも知れません。

しかしテイト・テイラーは前作ガール・オン・ザ・トレイン(2016)から、思わぬ方向へと駒を進めてきましたね。

ドラマ性に重きを置く作風なのは相変わらずかも知れませんが、急に血生臭くもマニア気質なジャンルに足を突っ込んできた、というか。

アイディアは悪くなかったと思うんですが、なにかプラスアルファがあれば、といったところですかね。

おばちゃんの異常性をさらに際立たせる演出とか、エンディングを定形から脱して違う形にするとか。

MAの娘をキャラとしてあんまり上手に使えてないのが少し気になったりはしました。

ま、ブラムハウスも「当たり」ばかりじゃない、ってことで。

副題がなけりゃあ、もっと違う感想になってたかも知れませんけどね(まだ言う)

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